最新記事

感染症

ビル・ゲイツの鼻をクンクンさせた驚異の「消臭力」とは?

2016年11月24日(木)15時38分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


成功の香り 感染症を引き起こすトイレの臭いの問題へのゲイツからの解答  thegatesnotes / Youtube


トイレを作っても使われないという現実

 だがトイレがあれば全てが解決されるわけではないようだ。ゲイツによれば、インドなど世界中でトイレの建設計画が進行中だが、途上国に設置されたトイレ、特にくみ取り式のトイレは、すぐに使われなくなってしまうという。トイレ内はすぐに強烈な匂いが立ちこめるようになり、それまでオープンエアーで用を足していた人びとにとっては、トイレ=不快、野外での排泄=快適となって、利用されなくなってしまうからだ。

 そこでゲイツが目をつけた、いや鼻を効かせたのが、スイスに本社をもつ香料メーカーのフィルメニッヒだった。創業120年のこの会社は、世界で最も有名な香水の一部を作ったり、飲料や食品の風味を高めるための香料を作っている。ビル・ゲイツ財団の支援の下、フィルメニッヒはトイレの匂いをひどくさせている犯人──インドール、p-クレゾール、ジメチルトリスルフィド、酪酸をつきとめた。それをもとに彼らは便や古くなった尿のような匂いを化学的に合成することに成功した。つまり「うんこ香水」である。

 この人工「うんこ香水」をもとにフィルメニッヒの研究者達は、ちょうどヘッドフォンのノイズキャンセリングの仕組みと同じように、悪臭に敏感な嗅覚受容体をブロックするような成分を香りに混ぜ、人間がかいでも臭いと思わなくすることに成功したのだ。フィルメニッヒは、この技術を製品にする際に、粉末にするべきかスプレーにするべきかなどを、インドやアフリカ地域で試験していく予定だという。

 ゲイツはブログの最後を次の言葉で締めくくっている。
「スイスの出来事は私の鼻にとって忙しい1日だったが、一つの香りがいまだに続いている。それは、世界をより良い場所にするために、人びとが才能を寄せあって成し遂げた"成功の香り"だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プラスチック条約、最後の政府間議始まる 米の姿勢変

ビジネス

米財務長官指名のベッセント氏、減税と関税が優先事項

ワールド

新たな貿易戦争なら欧米双方に打撃、独連銀総裁が米関

ワールド

スペイン・バルセロナで再び抗議デモ、家賃引き下げと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中