最新記事

日本社会

新卒採用で人生が決まる、日本は「希望格差」の国

2016年11月30日(水)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

 正社員より非正社員の希望率が低いのは他国も同様だが、日本ほどの落差はない。ヨーロッパ諸国では、キャリアが非正規雇用から始まり、徐々に正規雇用に移行していくパターンが主流というが、こうしたキャリアパスの違いにもよるだろう。新卒時に正社員になれるかどうかが重要な日本とは異なる。

maita161130-chart02.jpg

「希望が持てない」日本の若者は、自殺率も高い<図1>。1990年では主要国で最も低かったが、この四半世紀の間にトップになっている。「失われた20年」は、若者の人生に大きな影を落としている。

【参考記事】「女性のひきこもり」の深刻さと、努力しない人もいる現実

 この要因はいろいろあるだろう。その中でも若者の閉塞感が高まっていることは大きいと考えられる。筆者が過去30年の時系列データを検討したところ、中高年層の自殺率は失業率と強く相関しているが、若者はそうではない。若者の自殺率は、「これから先、生活が悪くなっていく」という意識と明らかな相関関係がある(拙稿「性別・年齢層別にみた自殺率と生活不安指標の時系列的関連」『武蔵野大学政治経済学部紀要』1号、2009年)。

 将来を展望して生きる若者にとって、「希望」がいかに重要であるかわかる。若者が希望を持てる社会を構築することは日本の最重要課題だ。まずは、<表1>に見られるような「希望格差」の是正が必要ではないか。22歳の就活でその後の人生が決定付けられる「新卒至上主義」のような慣行は、まずもって撤廃されるべきだ。

<資料:内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年、
   WHO「Mortality Database」>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中