最新記事

ニュースデータ

途上国型ワーカホリックから、いまだに脱け出せない日本

2016年11月16日(水)16時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

『世界価値観調査』では、もっと多くの国のデータが分かる。2010~14年に実施された第6回調査のデータをもとに、国際的な散布図を描いてみよう。<図2>は、横軸に「良いことだ」、縦軸に「悪いことだ」の回答比率をとった座標上に、調査対象の60カ国を配置したグラフだ。英仏は調査に非参加のためデータがない。

maita161116-chart02.jpg

 左上は仕事を重視する社会で発展途上国が多いが、日本はここに位置して、異彩を放っている。社会の発展に伴い、どの国も左上から右下に移行していくものだが、日本は80年代の位置とほとんど変わっていない。他の先進諸国とは全く異なる、日本の特徴だ。

【参考記事】「女性のひきこもり」の深刻さと、努力しない人もいる現実

 社会は成員が働くことによって成り立つので、仕事重視の考えは結構だが、日本はそれが極端に過ぎる。働き方でも、高いクオリティを伴う長時間労働が求められる。小売店の24時間営業や宅配便の無料再配達などが当然のこととされ、働く人を追い詰めている。

 労働力人口の減少(少子高齢化)により、このシステムがいつまでも続かないことは明らかだ。不要な過剰サービスをなくし、「ゆるい」働き方を普及させることが必要ではないだろうか。例え生活の利便性が多少落ちたとしても、働く人の精神疾患や過労自殺が頻発するような社会よりははるかにいい。成熟を遂げた日本社会が、どちらの方向を目指すべきなのかは明らかだ。

<資料:『世界価値観調査』

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中