最新記事

米中関係

習近平・トランプ電話会談――陰には膨大なチャイナ・ロビー

2016年11月15日(火)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 となると、アメリカが手を引いた国・地域に生まれた隙間には、必ず中国が手を延ばしていき、中国の世界覇権の可能性は、より大きくなってくる。

 それを考察する前に、トランプ氏と中国とのパイプの太さに関して触れたい。

全米を覆い尽くすチャイナ・ロビー「五毛」と王毅外相の発言

「習近平・トランプ電話会談」があった前日の11月13日、王毅外相は訪問していたトルコのアンカラで記者会見を開いた。その席上、記者団からの「中国側はトランプ次期大統領チームと接触があるか否か」という質問に対して、以下のように答えている。

――中米は、各層各級と常に均(ひと)しく緊密な関係を保ってきた。絶え間なく中米関係を発展させ深化させていくことは、米国共和党と米国民主党とのコンセンサスである。われわれはオバマ政権と協力しながら、中米関係の安定的な政権移行を確保したいと思っている。同時にわれわれはトランプ(政権移行)チームとも接触を強め、絶え間なく相互理解を増進させ、協力のコンセンサスを拡大していきたい。

 ここで重要なのは冒頭の「中米は、各層各級と常に均しく緊密な関係を保ってきた」という言葉である。

 筆者は90年代初めから、カリフォルニアのシリコンバレーにおける中国人留学生博士学位取得者の行動を考察し、日本に留学した中国人とアメリカに留学した中国人の帰国後の留学効果に関する比較追跡調査を行ってきた。その中で、中国政府が世界各地における華人華僑、特に博士学位取得者に対する戦略的行動をしていることを発見した。特に最近では、アメリカに送り込んだエリートたちがアメリカで市民権を得て、膨大な数のチャイナ・ロビーとして「各地各階層」で活躍している現実を知ったのである。

 先般、ワシントンD.C.で共和党系シンクタンクProject2049の招聘を受けて「日本軍と共謀していた毛沢東」に関する講演をしてきたが、そのとき遭遇したのは中国系民主活動家たちの「五毛に気を付けろ」という緊迫した忠告だった。

「五毛」は日本語で「ごもう」、中国語では「ウーマオ」と読むが、中国政府の回し者を指す。本来、清王朝を倒した辛亥革命後、一時期行なわれた民主的な選挙の際の、「五毛銭」というわずかな賄賂をもらって候補者に投票したことから、この言葉が生まれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン副大統領、トランプ氏の「合理的行動」に期待

ワールド

フーシ派、日本郵船運航船の乗員解放 拿捕から1年2

ワールド

米との関係懸念せず、トランプ政権下でも交流継続=南

ワールド

JPモルガンCEO、マスク氏を支持 「われわれのア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中