トランプ、通商・移民改革に意欲 実現には議会指導部と関係修復が必須
トランプ氏は、メキシコに壁建設費用を負担させるとしているが、米大統領といえども外国に無理やり費用を出させる権限はない。
より広範囲な移民政策としては、全体の移民の数を減らし、海外からの熟練労働者の受け入れを抑制する方向に動く可能性がある。そうなれば、移民法緩和を求めてきた経済界やヒスパニックには打撃となる。
ヘルスケア
医療保険制度改革法(オバマケア)を撤回し、代わりに各州にメディケイド(低所得者・障害者向け公的医療保険)の運営で裁量拡大を主張している。州をまたいだ保険販売も容認するとしている。
トランプ氏は議会の協力を得る必要があるが、上院で法案廃止に必要な60票の賛成票を共和党が確保するのは困難とみられる。また仮に数百万人に保険を提供した法律を廃止すれば、共和党は厳しい批判を受けかねない。
ただ、オバマケアの成功を目指さない人物を担当に起用するなど、トランプ氏には制度を弱める方法がいくつもある。
税と歳出
大幅な減税を約束する一方で、歳出の3分の1以上を占める医療・年金プログラムは維持する方針を示している。この組み合わせは財政赤字の急増につながる恐れがある。
インフラと国防予算を増やすが、医療と年金以外の支出は毎年1%削減することを提唱している。
これまでに税率を引き下げることや税制の抜け穴をふさぐことを目指してきた議会共和党から大きな支援が期待できる。だが、現在税制の優遇措置を受けている住宅保有者や企業などから強い抵抗を受けるだろう。
国民の支持が厚い給付プログラムを維持すると約束しているが、財政悪化を懸念する保守派議員が反発する公算が大きい。
金融規制
金融危機後の2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)を「解体する」と約束しているが、詳細は明らかにしていない。
共和党は公約で金融機関の商業銀行業務と証券業務の兼営を禁じた1930年代のグラス・スティーガル法の復活を掲げている。トランプ氏の選挙対策本部長を務めていたポール・マナフォート氏はこれを支持する考えを示していた。
ただ、共和党議員の多くはグラス・スティーガル法の復活に反対している。