最新記事

テロ組織

ISIS指導部「最後の1人になっても死ぬまで抵抗せよ」

2016年11月5日(土)11時00分
ジャック・ムーア、リーナ・ネトジェス

 8月の手紙では鼓舞の仕方も独特だ。司令官は自分がイラク中部の要衝ファルージャで守勢に立たされたときの「最悪の経験」について触れている。「同志の頭から漏れ出た脳」を目の当たりにした恐怖をつづり、「水も食料も薬もないなかで75日間耐え抜いた」と書く。

 この手紙に関して重要なのは、「死ぬか、神が勝利を与えるまで戦え」という命令が結局は無視されたことだろう。8月12日にシリア民主軍がマンビジを奪還した際、残っていたISIS兵は街を捨てて逃げたのだ。

「問題はモスルでも同じことが起きるかどうかだ」と、米プリンストン大学の研究者コール・ブンゼルは言う。「拠点としてはモスルのほうが重要だから、彼らはマンビジのときよりもずっと粘り強く戦うと思う。でも結局は撤退するかもしれない」

【参考記事】ISISのプロパガンダと外国戦闘員が急減、軍事作戦効果

 撤退準備は既に始まっている。イラクとアメリカの高官らによれば、ISISはモスルの地下に逃亡用の抜け穴を掘りながら、敵軍の侵攻を遅らせるために爆弾を仕掛けているという。

 それでもモスル奪還はそう簡単ではないだろう。司令官の手紙の冒頭に引用されているコーランの一節は、モスルでイラク軍が直面するISISの激しい抵抗を予感させるものだ。

 モスルの秋は美しいことで知られるが、今年はこれまでに見たこともないような凄惨な秋になるかもしれない。

[2016年11月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中