ISIS指導部「最後の1人になっても死ぬまで抵抗せよ」
8月の手紙では鼓舞の仕方も独特だ。司令官は自分がイラク中部の要衝ファルージャで守勢に立たされたときの「最悪の経験」について触れている。「同志の頭から漏れ出た脳」を目の当たりにした恐怖をつづり、「水も食料も薬もないなかで75日間耐え抜いた」と書く。
この手紙に関して重要なのは、「死ぬか、神が勝利を与えるまで戦え」という命令が結局は無視されたことだろう。8月12日にシリア民主軍がマンビジを奪還した際、残っていたISIS兵は街を捨てて逃げたのだ。
「問題はモスルでも同じことが起きるかどうかだ」と、米プリンストン大学の研究者コール・ブンゼルは言う。「拠点としてはモスルのほうが重要だから、彼らはマンビジのときよりもずっと粘り強く戦うと思う。でも結局は撤退するかもしれない」
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撤退準備は既に始まっている。イラクとアメリカの高官らによれば、ISISはモスルの地下に逃亡用の抜け穴を掘りながら、敵軍の侵攻を遅らせるために爆弾を仕掛けているという。
それでもモスル奪還はそう簡単ではないだろう。司令官の手紙の冒頭に引用されているコーランの一節は、モスルでイラク軍が直面するISISの激しい抵抗を予感させるものだ。
モスルの秋は美しいことで知られるが、今年はこれまでに見たこともないような凄惨な秋になるかもしれない。
[2016年11月 1日号掲載]