いま、ハンモック界が熱い。その最前線と基礎知識
そう考えると、軽量化を重視したシングルサイズだと、斜めに寝そべるにはちょっと狭いんです。もちろん寝られないわけではないので、それを分かった上で軽いものを選ぶのはありでしょう。ところが、それを理解せずにシングルサイズを使うと「ハンモックってあんまり寝心地がいいものではないんだな......」と誤解してしまう可能性もあります。
このシングル+なら、重量こそ210gになるものの幅が160cmと広くとられているので、寝具として気持よく使えると思います。他にも、寝心地より軽さを優先したいなら幅130cmの eno の Sub7(185g)、さらにもっと小柄で幅が気にならない人だったら幅127cmの Hummingbird のシングルといった選択肢があります。CTタープをはじめとして、組み合わせられるタープにもバリエーションが出てきているので、ぜひご自身にあったスタイルを検討してみてください。
ハンモックの固定観念を再考する
日本でハンモックというと、どうしてもリラックスするための道具と捉えられがちです。アウトドアでも、軽快なハイキングに持っていくというより、オートキャンプやリゾートキャンプに持っていくものといった印象を持っている人が多いのではないでしょうか。でも、実は嗜好品的にハンモックを使っている国は少数派です。アメリカのメーカーはハンモックを実用的な幕営道具として生産しているし、東南アジアや中南米ではもともと生活のなかに溶け込んでいる道具です。軍隊がジャングルでの作戦中に使ってきた歴史もあるので、ベトナム戦争後には放出品が多く出回りました。そうした背景のなかで、ハンモックは自然の中での旅の道具として広く受け入れられているのです。
日本の気候、風土を考えても、ハンモックを旅の道具として見直すことには大きなメリットがあります。アメリカでハンモックがよく使われているのも、気候がよく乾燥した西海岸ではなく、湿度も気温も高い東海岸です。標高が低くて森が多いトレイルが続き、平地が見つけにくく、地面も湿っていて、なおかつダニのような害虫も多い。そんな状況だからこそ、東海岸ではハンモックが重宝されています。整地してテントを立てる場合に比べて地面へのダメージも少ないですし、ストラップを木に巻きつけて荷重をかけても木の幹が傷むこともありません。
もちろんハンモックが万能だというわけではありません。幕営指定地での宿泊が中心の日本では、仕様が制限される状況も少なくないでしょう。しかし、日本の里山や低山といった森林限界内の自然は、本来ハンモックに適したシチュエーションなのです。もっともっと就寝具として活用できる方向を模索していきたいと思います。みなさんもぜひ、ハンモック旅の可能性を体感してみてはいかがでしょうか。
※本稿は土屋智哉(ハイカーズデポ)さんの談話をもとに、ギアード編集部が文章化しています。
執筆:Geared(Facebookページ)
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