最新記事

日本社会

男性社会の日本に訪れた女性たちの季節

2016年10月25日(火)10時30分
ジョウジ・サクライ(ジャーナリスト)

Kin Kyunh Hoon-REUTERS

<蓮舫民進党代表、小池百合子都知事、稲田朋美防衛相と、政治の世界で相次いで女性が重要ポストに就任。男性社会の日本に少しずつ実のある変化が起こり始めている>

 一昔前、台湾人の父と日本人の母を持ち、中国風のファーストネームだけで活動する女性が日本の最大野党の党首になると言えば、鼻で笑われただろう。

 しかし先月、民進党の代表選で圧勝した蓮舫(村田蓮舫)は、まさにそういう人物だった。前身の民主党の時代を含めて、女性が党首になるのも、外国に部分的なルーツを持つ人物が党首になるのも初めてのことだ。

 蓮舫だけではない。この夏、小池百合子が女性初の東京都知事になり、稲田朋美が女性で史上2人目の防衛相に就任した。

 いわゆる「ハーフ」の日本人に関しても目覚ましい出来事があった。先月、インド人の父を持つ吉川プリアンカがミス・ワールド日本代表に輝いたのだ。1年前には、アフリカ系アメリカ人の父を持つ宮本エリアナがミス・ユニバース日本代表に選ばれている。多くの日本人は、ハーフの女性を日本の顔として受け入れ始めているようだ。

【参考記事】「妊娠するためのサポート」が企業に求められる時代

 この20年間の経済停滞期に、日本の社会では静かに実のある変化が起きたのかもしれない。日本人は好むと好まざるとにかかわらず、民族やジェンダーなどについての概念を見直さざるを得なくなっている。

 現状では、女性が衆院議員に占める割合は9.5%(参院は20.7%)、企業の取締役に占める割合は2.1%にすぎない。OECD(経済協力開発機構)によれば女性取締役の割合はフランスでは約30%、カナダとアメリカでは約20%に達している。

 日本では男女の賃金格差も27%に上り(中央値の比較)、結婚後の女性がキャリアを追求する妨げになっている。一方、労働力に占める外国人の割合は2%に満たない。この割合は欧州諸国では平均10%、アメリカでは16%だ。

経済停滞の思わぬ恩恵

 しかし日本にとって、女性と移民の労働市場参加は避けて通れない問題だ。デフレ、低成長、世界最大の公的債務(16年度末の公債発行残高は838兆円に達する見通し)という3つの大問題は、安倍晋三首相のアベノミクスによっても大きく改善していない。

 その上、1人の女性が生涯に産む子供の数は平均1.5人を下回り、平均寿命は世界最長の83.7歳だ。少子化と高齢化により、勤労世代の人口が減る一方、年金生活を送る高齢者の人口がますます増えていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中