老朽化するアメリカ核戦力、次期政権に降りかかる巨額更新費用
カーター長官によれば、ロシアはすでに新たな核兵器システムを構築しており、同国の指導者たちが核兵器について十分に慎重かどうかという点で疑問が生じている、という。また同長官は、北朝鮮が引き続き脅威になっているとも述べた。
カーター長官の演説と並行して、国防当局者や専門家のあいだでは、予算の制約上、次期大統領はほぼ確実に、オバマ政権が計画した米国の核戦力の維持・近代化の是非と、実施するならばどの程度のペースで進めるのかという決断を迫られるだろうという観測が広がっている。
試練の時期
試練の時期が到来するのは2020年代だ。米国の弾道ミサイル搭載潜水艦、巡航ミサイル搭載戦略爆撃機、大陸間弾道ミサイル(戦略核戦力の3本柱)が耐用年数の終わりを迎えるからである。
議会予算局の試算では、核戦力にかかる総コストは、2024年までで3480億ドル(約35兆1340億円)となっている。だがこの金額には、2020年代後半に予定されている最も高額な更新費用が含まれていない。外部による試算では、核戦力の維持・近代化のコストを30年間で約1兆ドルとみている。
エネルギー省のモニッツ長官は20日、ロイターに対し、「(核戦力の)更新の実施については超党派的な公約があるので、それだけのコストはかかると覚悟しなければならない」と語った。「とはいえ、特に20年代には相当な予算増額になる」
エネルギー省は国防総省とともに核戦力に関する責任を分担しているが、その研究・生産施設の一部については、すでに設立以来73年が経過している。
次期政権は、コスト削減のために核戦力近代化計画の一部を中止、または延期する可能性がある。増税、財政赤字の拡大、国内プログラムの削減といった手段もあるが、いずれも米国の有権者には受けの悪い政策である。