最新記事

核兵器

老朽化するアメリカ核戦力、次期政権に降りかかる巨額更新費用

2016年10月3日(月)19時50分

 近代化計画のうち最も削減される可能性が高いのは、核弾頭の装備が可能な長距離巡航ミサイル(LRSO)と新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)である。

 エリザベス・ウォレン氏(マサチューセッツ州選出)、バーニー・サンダース氏(バーモント州選出)など10人の上院議員は7月、オバマ大統領に対して、LRSOに関する計画は「核戦争のリスクを増大させかねない不必要な能力を与えるもの」であるとして中止するよう求めた。

 国防総省当局者や国防専門家のなかには、巡航ミサイルは、防空網がステルス爆撃機でも浸透することが困難なほど強化された場合の保険になるという意見もある。

 クリントン政権であれトランプ政権であれ、地上配備の弾道ミサイルの数を現在計画されている400発より削減する可能性はある。あるいは、現行の大陸間弾道ミサイル「ミニットマンIII」の退役を先送りすることで新型ミサイルの配備を延期する可能性がある。「ミニットマンIII」は1発につき最低TNT火薬換算300キロトンの核弾頭を搭載するもので、推定14万人の命を奪った広島型原爆の20倍の威力がある。

 米国は、核不拡散条約のもとで核兵器の保有を認められた5つの核保有国の1つだ。他は、ロシア、英国、フランス、中国である。

 米空軍では、新たな地上システムのコスト(ミサイル、指揮統制システム、発射管制センターを含む)を600億ドル以上と試算している。

 ペリー元国防長官など米国の元当局者の一部は、地上配備ミサイルは不可欠なものではなく、段階的に廃止していくべきだと主張している。一方で、ロシア、北朝鮮による核攻撃の潜在的脅威のもとで、地上配備ミサイルの重要性は増していると支持する声もある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、GDP好調でもFRB利下げ

ワールド

米政権の「テックフォース」、約2.5万人が参加に関

ビジネス

カナダ中銀、次の一手「見通し困難」 不確実性高い=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中