最新記事

アフリカ

アフリカ諸国の脱退相次ぐICC、ガンビアは西側の二重基準を非難

2016年10月27日(木)17時57分
コナー・ギャフィー

ガンビアのヤヤ・ジャメ大統領 Lucas Jackson-REUTERS

 西アフリカのガンビアは、今月に入って国際刑事裁判所(ICC)からの脱退を表明した3番目の国家になった。その前には、アフリカ中部ブルンジと南アフリカが相次いで離脱を発表したばかり。いったい何が起こっているのか。

 ガンビアのシェリフ・ボジャン情報相は25日、国営テレビで声明を発表し、ICCは「有色人種、特にアフリカ人を迫害し屈辱を与えるための国際『白人』裁判所だ」と非難した。

 アフリカ諸国の間で白人による司法への反発が高まる中、2012年にはガンビア出身のファトゥ・ベンスダがICCの主任検察官に抜擢された。それにも関らず、ガンビアの離脱は止められなかった。

白人のための裁判所

 ボジャンはICCが西側諸国による戦争犯罪を見逃したと批判した。オランダのハーグで2002年に設置されて以来、ICCが捜査を開始した10件のうち9件がアフリカ諸国に関するものだ。

【参考記事】国際刑事裁判所(ICC)を脱退するアフリカの戦犯たち

ブレア元首相も戦犯だ

 西側の出身者が不当に見逃された最たる例としてボジャンが名指ししたのが、イギリスのトニー・ブレア元首相だ。ICCはブレアが2003年にイラク侵攻を決断した法的責任について、2006年に訴追しない決定を下した。イギリスでは今年7月、独立調査委員会(チルコット委員会)がイラク戦争をめぐるブレア政権の判断の過ちを厳しく指摘する報告書を発表した。英政府が平和的な方策を尽くさないまま、サダム・フセイン独裁政権打倒を掲げて2003年に米軍主導の軍事行動に踏み切ったと糾弾した。だがICCは改めて、ブレアを訴追しない方針を確認したのだ。

【参考記事】ブッシュとブレアのイラク戦争に遅すぎた審判「外交手段尽きる前に侵攻」世界中に混乱まき散らす

 ガンビアの発表は、先週金曜に南アフリカが国連に対してICCを脱退すると通告した矢先のことだった。南アフリカ政府は離脱の理由について、ICCの設立規定である国際条約「ローマ規定」に縛られると、アフリカ大陸の調停者としての役割を果たせないためだと主張した。例えば南アフリカは、2015年6月にICCの逮捕状が出ていたスーダンのオマル・ハッサン・アハメド・バシル大統領が入国した際は、身柄を拘束すべきところ滞在と出国を許した。

【参考記事】ICCを脱退する南アフリカはもうマンデラの国ではない

 10月上旬にはブルンジの国会が、ICCから脱退することを定めた法案を賛成多数で可決、ピエール・ヌクルンジザ大統領が18日に署名した。

 ガンビア出身のベンスダは今年4月、ブルンジにおける人権侵害の予備捜査に着手した。対象になったのは、ヌルンジザが大統領選への3選出馬を表明した2015年4月以降の状況だ。ベンスダによると、出馬に反対するデモ隊と政府を支持する武力勢力の間で衝突が続き、1年間で430人以上が殺害された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中