最新記事

映画

VR元年に攻める韓国、映画も没入感あふれる次世代上映が大ヒット

2016年9月9日(金)19時55分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

この夏日本でも公開された韓国映画「ヒマラヤ」は韓国内ではこのようなスクリーンX上映で話題を呼んだ (c) ScreenX

<サムスンがギアVRなどヘッドマウントディスプレイとそれに対応したカメラを発表、今年をVR元年としてパーソナルな映像体験を拡張させるコンテンツが人気の韓国だが、一方でわざわざ足を運んでみる必要のある映画館でも次世代の上映方式を提唱、コンテンツも含めて攻勢を強めている>

 日本はもちろん海外も、夏休みや冬休みの時期はブロックバスターと呼ばれる超大作映画が公開されるシーズンだ。この夏の話題作として日本では「シン・ゴジラ」が大ヒットしているが、お隣の韓国では「釜山行」「仁川上陸作戦」といった娯楽大作がともに観客動員700万人を超える大ヒットとなっている。さて、この日韓3作品に共通するのが通常上映の他、4DXといった新しい方式でも上映されている点だ。日本でこの夏公開された韓国映画「ヒマラヤ〜地上8000メートルの絆〜」も韓国では昨年12月に新上映方式で公開された作品で、韓国では同時期に公開された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」をしのぐヒットとなり、観客動員は歴代28位となる775万9000人を記録した。

 「ヒマラヤ」は、韓国では有名なエベレスト登頂の悲劇を扱った実話であるということ、またロケ撮影が過酷で俳優たちが苦労したことなどが話題となって公開前から注目を集めていた。エベレストに眠る仲間の亡骸を回収するために過酷な遠征を行うというストーリー、そして情熱的な韓国人の心をくすぐる熱い台詞、涙が止まらぬ感動のラストに多くの観客が共感し、それらが観客動員に繋がった。

「ヒマラヤ」本国版ポスター 主演のファン・ジョンミンはこの作品のほか、「国際市場で逢いましょう」「ベテラン」と
昨年は2本の主演映画が1000万人動員を記録した超人気俳優。 © CJエンターテインメント

 一方で、多くの映画ファンが公開を待ち望んでいた理由がもう一つあった。それが、日本ではまだ体験することができない「スクリーンX」という新しい映画上映方式である。

 スクリーンXは、韓国の大手シネコン会社CGVグループが開発した。上映シーンに合わせてシートが上下に動いたり風や霧が吹いてくるという今ではすっかりおなじみとなった4DXも同社が手掛けたものだ。そのCGVグループが次世代上映方式として、満を持して発表したのがスクリーンXである。

 初めて見た観客は、一体どこを見ればいいか多少戸惑ってしまうかもしれない。と、言うのも正面のスクリーン以外に、左右両面の壁にも映画が映し出されるからである。各壁上部にプロジェクターが設置されており、正面のメインスクリーンに合った映像が左右両壁にも映し出され、視界のほぼ全てが映画の画面という迫力満点の映像が楽しめるようになっている。


リュミエール兄弟の発明の流れを汲む? スクリーンXの英語圏向けに紹介する動画

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中