「金」じゃなくてもOK? 変わる中国のスポーツ観
だが明るい兆しは見え始めている。リオ五輪で中国国民の心をつかんだのは、20歳の競泳選手、傅園慧(フー・ユアンホイ)だった。
傅は女子100メートル背泳ぎ予選で自己ベスト記録を出して決勝へ進み、銅メダルを獲得した。しかし彼女を国民的スターにしたのは愛嬌のある態度と、ざっくばらんな発言だ。女子400メートルリレーで中国チームが4位で終わった後には、「生理になってしまって」と、スポーツ界のタブーを破るコメントをした。
【参考記事】インドはなぜ五輪で勝てない?
銅メダルに大喜びした傅の姿と中国国内での彼女の人気は、中国人のオリンピック観の変化を示している。
傅は、五輪を楽しんでいるという発言でも周囲を驚かせた。「楽しさを求めるのは自己中心的で、中国の国家的努力を卑小化する非愛国的態度だとかつては見なされていた」と、ニューヨーカー誌のチアヤン・ファン記者は指摘している。「国家についてではなく、自分の気持ちを即興的に語る(傅の)能力は新しい存在だ」
中国はついに、オリンピックを国威発揚や優越性証明の舞台と捉えることから脱却し始めた。これは特筆すべき出来事だ。
今の中国は敗北を気にしない。中国のテレビ番組司会者が言ったように、勝っても負けても自分に自信があるからだ。
From thediplomat.com
[2016年9月 6日号掲載]