最新記事

2016米大統領選

トランプはなぜプーチンを称賛するのか

2016年7月28日(木)18時00分
デビッド・フランシス

Carlo Allegri-REUTERS

<バルト三国やウクライナ、日本といった同盟国のことは歯牙にもかけないトランプが、ロシアにだけは気安く、甘いのはどういうことか? 様々な疑問が出てきている>

 米民主党全国大会の開幕直前に民主党全国委員会(DNC)のサーバーから盗まれたメールが公開された。同党のバーニー・サンダース候補の足を引っ張る画策をしていたとして、デビー・ワッサーマンシュルツDNC委員長は辞任に追い込まれた。

 ヒラリー・クリントンの大統領候補指名を目前にこのドタバタ劇を仕組んだのは、ロシア政府系のハッカー集団と見られている。共和党の大統領候補ドナルド・トランプはロシアのウラジーミル・プーチン大統領と政商たちに借りがあるのではないか、という噂と状況証拠も出てきている。いったいロシアはどこまで米大統領選とアメリカ政治に影響力を行使しているのか。

大統領候補にあるまじき行為

 トランプは、こともあろうにそのロシア政府系ハッカーにもっとクリントンの秘密をリークして欲しいと呼び掛けた。クリントンが国務長官時代に私用のメールアカウントを使って公務のメールのやりとりをしていたことが発覚した後、クリントンが個人的なメールだとしてサーバーから削除した約3万通のメールのことだ。

 昨日の記者会見でトランプは、こう言った。「あのハッカーたちは例の3万3000件の電子メールも持っているはずだ。クリントンが削除し失われたメールだ。そこにどんなおいしいネタが隠されているか、大いに楽しみだ」

【参考記事】常軌を逸したトランプ「ロシアハッキング」発言の背景

 大統領候補が前国務長官の秘密を探るようロシアに依頼するなど常識では考えられない。安全保障に関わる問題だ。そうでなくても、ロシアはトランプを勝たせるために米大統領選に介入しているという疑いがある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はトランプを褒めそやし、トランプもプーチンに賛辞を惜しまない。

 一方でトランプはロシアの隣でNATOに加盟しているバルト3国に対し、ロシア軍が侵攻しても米軍の支援を当てにするな、とまで言ってきた。

【参考記事】トランプ、NATO東欧の防衛義務を軽視

 トランプは以前、プーチンを「非常によく」知っているとうそぶいていたが、27日の記者会見では前言を撤回し、「プーチンとは会ったことがない。どんな人間か知らない」と言った。

 トランプはこうも言った。「彼は1つだけ私を褒めてくれた。私が天才だと言ってくれたんだ。それを報じた新聞には感謝したが、プーチンとの関係はそれだけだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

9月改定景気動向指数、一致指数は前月比+1.3ポイ

ビジネス

村田製が新中計、27年度売上収益2兆円 AI拡大で

ビジネス

印財閥アダニ、米起訴受け銀行や当局が投融資調査 資

ビジネス

伊銀行2位ウニクレディト、3位BPMに買収提案 約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中