不安なイギリスを導く似て非なる女性リーダー
昔ながらの穏健な保守派
メイは「縁故資本主義」と闘うことと、少数の特権階級より国民全体のためになる政策の実行を約束している点で、サッチャーとは違う。しかしサッチャーも就任当時、国と大企業の独占に対抗し、国民の利益を守ることを約束していた。
ただし、2016年のイギリスは1975年とは違う。メイは、EU離脱の国民投票で見えたグローバル化の勝者と敗者の分断に緊急に対処すべきだと認識している。
サッチャーは首相就任時に声が高いことをからかわれた。メイの首相就任時には大衆紙の1面に、彼女の細いハイヒールが保守党内のライバルを踏みつぶすコラージュが載った。新聞の古い体質はなかなか変わらない。だがイギリスも女性指導者には慣れてきたから、メイはサッチャーより敬意を持たれるだろう。
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イギリスは不安な時代に強い女性に頼る傾向がある。エリザベス1世もビクトリア女王も、エリザベス2世もサッチャーも、大変な時代にトップに立った。メイはライバルたちと違って国民の空気を完璧に読み取り、深刻な不和が表面化したこの時代に調和をもたらすと誓った。
今のイギリスは、エリートとマッチョな男性政治家に引き裂かれている。多くの点で昔ながらの穏健な保守派であるメイは、この時期にぴったりの女性リーダーかもしれない。
[2016年8月 2日号掲載]