最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

ヒラリー「肩入れ」メール流出、サンダース支持者はどう動く?

2016年7月25日(月)18時30分
渡辺由佳里(エッセイスト)

 理由がどうであれ、中立であるべきDNCがヒラリー陣営に肩入れしていただけでも、サンダースと支持者にとっては十分な「不正」だ。憤ったサンダース支持者は、ツイッターで#DNCleakをトレンドのトップに押し上げた。

 今回のメール流出は、副大統領候補発表という重要なPR効果をかき消しただけでなく、サンダースがヒラリーを公式に支持した12日のイベントで「団結」と「癒やし」のプロセスが始まっていた民主党の傷をまた大きく開けてしまったのだ。

 メール流出は、ヒラリー陣営に決定的な打撃を与えるのだろうか?

 気になるのは、ようやくヒラリー支持に傾きかけていたサンダース支持者の動向だ。

 12日のニューハンプシャー州のイベントで取材した、2人の若者にたずねてみた。

【参考記事】ようやくヒラリーを受け入れ始めたサンダース支持者

 大学生のエリックは、「内容には驚いていない」と答えていた。高校生のポールも同じだった。「むしろ、これまで『陰謀論者』扱いされてきた自分たちの主張が正しかったことを認めてもらえてよかった」と言う。

 だが、ヒラリーを支持できるかどうかになると、支持者の間で微妙に意見が食い違っている。

 高校生のポールは「革新的なサンダース支持者が(ヒラリー支持に)乗り換えるとは思えない。多くは(アメリカ緑の党の)ジル・スタインに投票するだろう」と言い、息子の影響で政治に興味を抱くようになった母親のリサは、「トランプには投票しないが、誰に投票するか現時点ではわからない」と、ヒラリー支持をためらっている。

 一方エリックは、「民主党がサンダースに対して不公正だったことが数カ月前に明らかになっていたら、悪夢だっただろう。けれども、クリントンかトランプか、という選択肢に直面した今、僕にどんな選択があるだろう? この時点では、クリントンに投票し、内部からシステムを革新的に変えていくことを望むしかない」と、反トランプ票としてヒラリーに投票するつもりだという。

 2人とも、先週末に発表された副大統領候補ティム・ケーンの選択については、「中道で革新的ではないからサンダース支持者には受け入れられない。保守にもリベラルにもアピールしないので、選挙には不利な人選」と否定的だ。スター性がないケーン選択の発表は、同じ日に起こったウィキリークスのニュースに圧倒されてしまうのではないかとも見られた。

 しかし、ヒラリーが副大統領候補を紹介するマイアミでのイベントで、ケーンが語り始めると、ソーシャルメディアの雰囲気は一変した。
 
 流暢なスペイン語を自然体で英語に織り込むケーンのスピーチには、実直さと静かな決意がにじみ出ていた。しかも、笑顔を絶やさないメッセージは徹底的にポジティブだ。フェイスブックでのライブ中継のコメントやツイッターも「これまでサンダース支持者で強固な革新派だったけれど、#ClintonKaineのスピーチを観た今、誇りを持って11月にこの2人に投票できる」というポジティブなものが目立った。また「私も! ケーンのスピーチを聞くまでは#StillSanders (まだサンダース支持)だったけれど、彼に魅了された。ケーンはサンダースと同じように信頼できる。私はクリントン=ケーンを応援する」という反応もあった。

 このスピーチまではツイッターのトレンドで#DNCleakがトップだったが、スピーチ後は #ClintonKaineがトップに入れ替わった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

2月完全失業率は2.4%に改善、有効求人倍率1.2

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中