「南シナ海の国際仲裁判決、争いを激化させる」駐米中国大使
7月12日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、中国が南シナ海で主権を主張している独自の境界線に法的根拠はないと認定したことを受け、中国の崔天凱駐米大使(写真右)は、この判決は「争いを激化させる」と語った。シカゴで2014年12月撮影(2016年 ロイター/Andrew Nelles)
オランダ・ハーグの仲裁裁判所が12日、中国が南シナ海で主権を主張している独自の境界線「九段線」に法的根拠はないと認定したことを受け、中国の崔天凱駐米大使は同日、この裁定は「争いを激化させる」と反発を示した。
崔大使はワシントンで開かれた国際会議で、中国政府は南シナ海の領有権をめぐる他の当事者との交渉を今後も続けると表明し、同海域で緊張が高まっている原因は、米国がここ数年間にアジア重視路線に転換していることにあると指摘した。
また、今回の仲裁裁判所の裁定は「おそらく仲裁手続きの乱用につながる」と懸念を表明。「争いの解決に向けた交渉に関わる国の意欲を低下させる」だけでなく、「争いを激化させる」と語った。
一方、米国は、仲裁判断は最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものと見なすべきであり、緊張を高める理由にしてはならないとの見解を示した。
アーネスト米大統領報道官は「判断を挑発行為に関与する機会として用いないよう、すべての当事者に求める」と呼びかけた。
これに先立ち、国務省のカービー報道官は「南シナ海における紛争の平和的解決という共通目標に大きく貢献するもの」と語った上で、「米国はすべての当事者がそれぞれの責務を順守するよう希望する」と述べた。
また同報道官は、中国がこの数週間、南シナ海で軍事化を継続している兆候を確認していると明らかにした。
これに対し、中国国営新華社通信によると、中国政府は国務省報道官の声明に強い不快感を表明。外務省の陸慷報道局長は米国の声明に強く反対するとした上で、米国の行為は法の精神や国際法の規範に反するもので、領土問題において一方だけ支持しないとの宣言にも逆行していると述べた。
米大統領選で民主党候補指名が確実となったクリントン前国務長官は12日、南シナ海は米国経済にとって「決定的に重要」と述べ、今回の裁定を歓迎する姿勢を示した。ロイターに公表した声明で「全関係勢力が今回の判断を順守し、引き続き平和的かつ多角的な紛争解決を模索していくことが重要」と述べた。