最新記事

中国政治

小さな村の民主主義を強権でつぶす習政権

2016年6月30日(木)16時00分
リア・リュウ、べサニー・アレン・イブラヒミアン

 林が訴えるように、地方政府による不当な土地収用は中国全土にはびこる病弊で、毎年各地で何千件もの争議が起きている。地方政府は土地払い下げを主要な財源にしてインフラ整備などの公共事業を行い、経済成長を達成しようとする。土地を取り上げられた農民への補償は微々たるものだ。

 17の省で1791人の農民を対象に行われた11年の調査では、土地を取り上げられた農民は平均して1畝(ムー、約667平方メートル)当たり1万8739元(約29万3078円)の補償金を受けていたが、地方当局による土地の払い下げ価格は1畝当たり約77万8000元(約1216万7920円)にも上る。烏坎の闘いに中国全土の人々がエールを送ったのも無理はない。

magw160630-02.jpg

直接選挙で村の指導者に選出された共産党村委員会の林祖恋書記 Alex Lee-REUTERS

 習近平(シー・チンピン)国家主席は就任以来、腐敗一掃の旗を振る一方で、厳しい言論弾圧を行ってきた。11年の烏坎の闘いが示すように、汚職を摘発するには言論の自由が必要だが、習政権はそれを認めようとしない。

 人民日報系のタブロイド紙・環球時報の6月20日付の論説は、「烏坎の村人のような過激な行動が他の地域の土地争議にも広がれば、中国は草の根レベルで大混乱に陥る」と警告した。

 11年に烏坎で行われたような当局と村人の話し合いは習指導下の中国では望めない。そして腐敗だけがはびこり続ける。

From Foreign Policy Magazine

[2016年7月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米FRB、財政不透明でもQT継続可能=クリーブラン

ビジネス

自動運転ソフトのネット更新、中国が当局の承認義務付

ビジネス

中国人民銀行、アウトライト・リバースレポで2月に1

ビジネス

タイ中銀理事長、政府が推す元財務次官が就任へ=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 6
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中