小さな村の民主主義を強権でつぶす習政権
林が訴えるように、地方政府による不当な土地収用は中国全土にはびこる病弊で、毎年各地で何千件もの争議が起きている。地方政府は土地払い下げを主要な財源にしてインフラ整備などの公共事業を行い、経済成長を達成しようとする。土地を取り上げられた農民への補償は微々たるものだ。
17の省で1791人の農民を対象に行われた11年の調査では、土地を取り上げられた農民は平均して1畝(ムー、約667平方メートル)当たり1万8739元(約29万3078円)の補償金を受けていたが、地方当局による土地の払い下げ価格は1畝当たり約77万8000元(約1216万7920円)にも上る。烏坎の闘いに中国全土の人々がエールを送ったのも無理はない。
習近平(シー・チンピン)国家主席は就任以来、腐敗一掃の旗を振る一方で、厳しい言論弾圧を行ってきた。11年の烏坎の闘いが示すように、汚職を摘発するには言論の自由が必要だが、習政権はそれを認めようとしない。
人民日報系のタブロイド紙・環球時報の6月20日付の論説は、「烏坎の村人のような過激な行動が他の地域の土地争議にも広がれば、中国は草の根レベルで大混乱に陥る」と警告した。
11年に烏坎で行われたような当局と村人の話し合いは習指導下の中国では望めない。そして腐敗だけがはびこり続ける。
[2016年7月 5日号掲載]