最新記事

事件

フロリダ銃乱射事件から1週間、生存者が惨劇の一部始終を語った

2016年6月20日(月)19時27分


トイレでの恐怖

 最初の警察官、そして応援に駆け付けた他の警察官と銃撃を交わした後、マティーン容疑者はクラブ内の壁に囲まれたバックヤードに退却した。そこには何十人もの常連客が避難していた。

 多くの人々が奥の壁に沿った2箇所のトイレに逃げ込んでいた。カーターさんと2人の友人は、他の客たちと一緒の個室ですし詰め状態になっていた。32歳のエンジェル・サンティアゴさんは、別のトイレで、やはり人でいっぱいの個室の中にいた。

「私たちはただ、銃声が何度も何度も何度も響くのを聞いているだけだった」と彼は言う。「そして銃声がどんどん大きくなり、近づいてきた。たぶん火薬だろうが、匂いも感じるようになってきた」

 マティーン容疑者はサンティアゴさんが逃げ込んでいたトイレに突入し、銃を乱射。サンティアゴさんは左足と右膝に2発銃弾を受けた。「多くの人が撃たれた。一面、血の海だった」と彼は言う。

 それからマティーン容疑者は、カーターさんと彼女の友人たちが隠れていた別のトイレに向かった。さらに銃声が響き、悲鳴が上がった。銃弾は個室の壁を貫通し、カーターさんも友達も、みな負傷した。

 どの生存者も、銃撃がどれくらい続いたのかはっきりとは覚えていないようだった。だがある時点でマティーン容疑者は銃撃をやめ、バックヤードでうずくまった。

 警察はこの機を捉え、クラブのメインフロアにいた負傷者の一部を救出した。警察官がコロンさんをクラブから引きずり出し、通りの向かい側にある「ウェンディーズ」に連れて行った。「周囲を見ると、そこらじゅうに遺体があった。私たちはみな苦しんでいた」と彼は言う。

 警察は、マティーン容疑者をクラブの奥に追い詰めないことにした。彼と一緒にそこに留まっている人々の安全を考えたからである。

「彼らの生命を危険に晒したくはなかった。だから我々はSWATの隊員が到着するまで現場を封鎖することにした」。オレンジ郡保安官のジェリー・デミングス氏はあるインタビューでこのように話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中