未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会
ちなみに日本では離婚のインパクトも男女でかなり差異が生じている。戦後の離婚率と自殺率の推移を見ると、2つのデータの相関関係は男女でかなり様相が違っている。
<図2>は、1950年から2014年までの時系列データをもとに作成した、離婚率と自殺率の相関図だ。最新の2014年のドットは、赤色で示している。
男性は、離婚率が高い年ほど自殺率も高い傾向にあるが、女性は逆になっている。相関係数(-1から+1までの値をとる測度で、前者に近いほどマイナス、後者に近いほどプラスの相関が強いことを意味する)を計算すると、男性では+0.7599,女性では-0.4802で、両方とも統計的に有意(相関関係があること)だ。
男性の場合、支える目的や情緒安定の場の喪失という意味で、離婚(家族解体)は自殺のきっかけになり得るが、女性は必ずしもそうではないことが示唆されている。女性の場合は、家庭の諸々の束縛から解放されるという点で、離婚は自殺の抑止因になっていることも考えられる。
【参考記事】日本男子「草食化」の背景にある経済格差
いみじくもフランスの社会学者デュルケームは、『自殺論』の中で次のように述べている。「結婚生活は、女子が自分の運命を耐えがたく感じたときでも、その運命を変更することを禁じている。したがって、その規則(筆者注:離婚の抑制)は、女子にとっては、これといった有利さも与えられない一つの拷問なのだ」(宮島喬訳『自殺論』中公文庫〔1985年〕)と。
19世紀のヨーロッパ社会の観察に基づく所見だが、現代の日本でも、結婚生活が女性にとって窮屈なものであることは否めないだろう。
未婚男性の「不幸」感が未婚女性と比較して著しく高いというデータは、日本の家族の意味合いが男女で異なっていることがうかがわれる。それは、著者の過去の記事でこれまでにも指摘していることだが、日本社会の性役割規範(ジェンダー観)がいまだに根強いことの証左に他ならない。