最新記事

医療

ペニス移植成功で救われる人々

2000年代に入ってペニス移植の必要性は著しく増加している。その訳は…… 

2016年5月17日(火)18時26分
ジェシカ・ファーガー

朗報 患者の写真入りで移植成功を伝える病院のホームページ Massachusetts General Hospital

 マサチューセッツ総合病院の外科医師団は昨日、世界で3例目、アメリカでは初となるペニスの移植に成功したと発表した。移植を受けたボストンの男性は、陰茎がんのため数年前にペニスを切除していた。手術には15時間を要した。

 患者はマサチューセッツ州ハリファックスに住む64歳のトーマス・マニング。医師団が先週述べたところによれば、術後の経過は良好で、ドナーの臓器に対する拒絶反応や出血、感染症の兆候もなく、一定期間を経れば排尿機能も性機能も回復する見込みだ。

 今回の画期的な手術を準備するために、医師団は3年半以上を費やした。形成外科や泌尿器科、精神科、感染症科、看護師、ソーシャルワーカーなど多くの専門家の協力が不可欠だった。

【参考記事】「人体」を再現した小さなチップが、医療を変える

 マサチューセッツ総合病院が今回の手術を最初に検討したのは2012年。極めて複雑といわれる手の移植手術に成功した後だ。ニューイングランド臓器バンク(NEOB)との連携も功を奏した。

 患者のマニングは、病院が発表した声明のなかで医師団に感謝の意を表し、この手術は多くの男性の人生を変える可能性を秘めていると述べた。「本日、わたしの人生は新たな幕開けを迎えました。この先の人生は、わたし個人の希望だけでなく、生殖器を負傷したほかの人々、とりわけ戦場で自らの命を危険にさらした結果、深刻な損傷を負った兵士たちへ向けた希望で満ちています」とマニングは述べた。「この成功を皆で分かち合いながら、こうした移植手術の輝かしい未来が開かれるよう願っています」

米軍兵士に負傷者が急増

 過去には、2006年に中国の男性がペニス移植手術を受けたが、拒絶反応のため失敗した。また2015年3月には、南アフリカのケープタウンに住む男性が移植手術を受けた。割礼儀式の失敗による感染症が原因でペニスを失っていたが、手術は成功し、男性の恋人は4カ月後に妊娠した。今回の手術はこれらに次ぐ3例目だ。

 ペニス移植の必要性は近年、著しく増加している。戦闘で性器を負傷する軍人が増えているためだ。「ジャーナル・オブ・メンズ・ヘルス」誌に2014年に発表された研究によると、こうした負傷は2000年代初頭から350パーセント増加している。同論文の執筆者たちは、テロリスト掃討作戦のなかでは、大砲やミサイルといった従来型兵器ではなく、足元で爆発する手製爆弾(IED)がより頻繁に使われるようになっているためとみられている。

【参考記事】米軍の新兵器は「サイボーグ兵士」、DARPAが開発中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中