最新記事

韓国

韓国総選挙の惨敗と朴槿恵外交の行方

2016年4月27日(水)17時00分
ロバート・E・ケリー(本誌コラムニスト、釜山大学准教授)

 日本と韓国が新たな脅威から自国を防衛するには、ミサイル防衛が欠かせない。ところが、韓国の左派は、米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備することに反対してきた。

 左派は今回の勝利により、費用負担や用地提供を拒否することでTHAADの配備を阻止するチャンスを手にした。もし、それでも左派がそうした動きを見せなければ、慰安婦合意のケースと同様、ミサイル防衛に対して初めて超党派の合意が形成されたと見なせる。

 これまで韓国の左派は、北朝鮮に甘いという印象を持たれてきた。実際、左派の実力者である「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は昨年まで、10年に起きた韓国海軍哨戒艦「天安」の撃沈事件が北朝鮮によるものだと認めていなかった。

 左派が選挙で苦戦し続けてきた大きな要因は、安全保障問題で弱腰というイメージにある。北朝鮮が核実験とミサイル実験をエスカレートさせるなか、その傾向は一層強まっていた。

 しかし最近、左派は北朝鮮に対して厳しい姿勢を示し始めた。北朝鮮の核が脅威であることを認め、THAADの配備が必要である可能性も示唆している。このような軌道修正により、左派は有権者に相手にされるようになり、ようやく自らの強みである内政問題を武器に朴政権に挑めるようになった。

 こうして選挙で下馬評を覆す勝利を収めた韓国の左派勢力は、政府に待ったをかける力をどのように使うのだろうか。

[2016年4月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中