『オマールの壁』主演アダム・バクリに聞く
――壁を登るシーンの一部はスタントを使ったのに、落ちるのだけは自分でやった?
すごく簡単だからね!
――『オマールの壁』は日本公開までに3年かかったが、この3年間はあなたにとってどんな時間だった?
個人としても俳優としても学びが多く、いろんなことがぎっしり詰まった3年間だった。自分にとって転換期だったようにも思う。
(その後に製作された)『アリとニノ』という映画で主演したが、そのアリ役が年中お祈りをしている人物ということもあって、スーフィズム(イスラム教の神秘主義)について本を読んだり、学んだりした。自分がスピリチュアルなことに興味があることも分かった。生まれて初めてコーランをちゃんと読んで、人生を変えるような智恵が詰まっていることにも気付いた。
初めての出演作が『オマールの壁』という映画だったので、ある種のプレッシャーや責任を感じている。例えば、ハリウッドはタイプキャスト(イメージの固定化による類似的なキャスティング)が多く、テロリストの役が来たりする。でも、もちろんノーです。自分としてはこの映画が基準になっていて、「オマールの後でこういう役をやっていいのか」といつもプレッシャーを感じていた。でもすごく有意義で、素晴らしい3年間だった。
――この映画の中で好きなシーンを1つ挙げるとしたら?
1つだけ選ぶのは大変だけど、あえて言えば、最後の方でオマールが壁を登るのを老人が助けてくれるところ。
――それははぜ?
あの場面はまさにパレスチナの物語を表していると思うから。何世代もの人々が、パレスチナのああした苦しい状況の中に生まれ育ち、オマールのように希望を失いかけていく。でもそのときに老人、つまり前の世代の人たちが希望を失わないよう助けてくれる。
壁自体がパレスチナの苦しみや葛藤を象徴するものであり、悲劇を思い出させるものだ。