荒れる米大統領選の意外な「本命」はオバマ
振り返れば、2008年の大統領選挙でオバマ大統領は、「国民の雰囲気をすくい上げることで、(大統領は)国の方向性を変えることが出来る」と述べていた。米国民の内向的な雰囲気をすくい上げている点では、トランプ氏はオバマ大統領と共通している。もっとも、2008年のオバマ大統領が希望に満ちた「チェンジ」を謳ったのに対し、今年のトランプ氏の選挙活動は怒りと憤りに彩られている。両者が放つエネルギーは、驚くほど異なっている。
実は両者のあいだには、もう一つの共通点が指摘されている。絶対的な自信である。トランプ氏は、外交アドバイザーを問われた際に、「まずは自分自身と話をする。自分は優れた頭脳を持っているからだ」と答えている。オバマ大統領も2008年には、「どのような問題でも、自分はどのアドバイザーよりも良く知っている」と述べていた。
正反対のスタイルであるにも関わらず、ほのかに浮かぶ共通点。なおさらオバマ大統領は、トランプ氏に我慢がならないのかもしれない。
安井明彦
1991年富士総合研究所(現みずほ総合研究所)入社、在米日本大使館専門調査員、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長、同政策調査部長等を経て、2014年より現職。政策・政治を中心に、一貫して米国を担当。著書に『アメリカ選択肢なき選択』などがある。