最新記事

ワークプレイス

個人を尊重する社風づくりで電力業界の競争を勝ち抜く

2016年4月8日(金)18時14分
WORKSIGHT

wsEssent-2.jpg

アトリウムに隣接したカフェ。社内には他に無料のコーヒーメーカーがあるにもかかわらず、オープン後は社員から大人気なのだそう。

wsEssent-3.jpg

2階の執務エリア手前のミーティングスペース。従来はギャラリーのように絵を展示していたが、人の流れを考え交流の場に変更した。

「あえて便利なツールを提供しない選択をしたんです。『パブで友達と待ち合わせをするのと同じでしょう?』と。同じ建物内にいるんだから、ちょっと歩いて探すなり、電話をするなりすればいい。過度にテクノロジーに依存するのではなく、クリエイティブに、自分の頭を使って考えてほしいんです」

 従業員のワークスタイルを変えるインパクトで言うなら、オフィス空間の変化に劣らず、自宅勤務の推奨も大きい。現在のところ、週3日は出勤・週2日は自宅勤務という形態が平均的だ。自宅勤務の効用は第一に生産性の向上。自宅勤務の推奨によりオフィススペースを削減、オペレーションコストを大幅に抑えられた。

【参考記事】シェアリングエコノミーで人をつなぐ、オランダ発のコワーキング

個人の自由度を組織の生産性につなげる取り組み

 チェンジマネジメント実施前の2009年、エッセントは自宅勤務について調査を行った。22職種のチームに1年間自宅で仕事をしてもらったところ、生産性は15%向上。自宅にいれば体調が悪くても仕事を多少は進められるのだろう、病欠も20%減。総じて「仕事と生活のバランスが向上した」というポジティブな意見が目立つ結果となった。

「要するに、時間を自由に使うことができるのが自宅勤務の一番のメリットでしょう。例えば以前は、クルマを修理するにもわざわざ半日休みをとっていたのが、今は気楽なもの。生産性向上は私自身も実感しています。家で1日、2日仕事をするとオフィスでの1週間分の仕事ができる。すごく効率がいいんです」

 もう1つ、優秀な人材が集まり始めたことも、自宅勤務推奨による成果に上げられる。もとよりオランダでは自由度、マネジャー、給与が勤務先を決める大きな理由と言われている。エッセントはその自由度で傑出した存在だと言える。結果、エッセントで働きたいと希望するワーカーが増えたということだろう。

 だが、個人の自由度が増え、個人の生産性を向上させることが、組織の生産性に直結すると言い切れるのか。例えば、自宅勤務が増え、同僚と接する機会が減れば、孤独が募ることもある。また、チームスピリットが薄れていく弊害はないのか。

「確かにチームと話し合いをしなければ仕事は進まない。ですから、オフィスへ行く必要は常にあるんです。自宅勤務が始まった当初は、週に2日はチームとミーティング、2日は自宅勤務で、あと1日はとにかく出社と決めていました。ただ、仕事の話ばかりでもよくない。そう思って、オフィス隣のパブに行って、仕事以外の話をするようアレンジしたところ、自然に会話が増え、チームスピリットも育っていきました」

wsEssent-4.jpg

フロアの通路上に設けられたカフェスペース。窓の向こうには中庭に植えられた竹が見えており、オフィス全体としても竹の意匠が至るところに取り入れられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中