中国、「私の名前」は「党」
したがって「姓社」は消え、一党支配がある分だけ「姓資」でさえないのだ。
確実にあるのは「一党支配体制」だけだ。
つまり、「中国の名前」は「社会主義」でもなければ「資本主義」でさえもなく、「中国共産党」=「党」なのである。
「私の名前は党」。
中国はいま、そのように宣言しているようなものである。
たしかに習近平総書記は「党と政府のメディアの姓は党」と言っただけで「中国の名前は党」とまでは言っていない。しかし中国の言論を党と政府が支配している以上、「中国の姓は党」と言っているのと同じだ。
これは「姓社姓資」論議よりも、もっと悪い。明らかな精神文化の後退だ。こうでもしなければ、もう持たないところまで中国は来ている。「人民こそが主人公」「人民のために服務する」などと美辞麗句でごまかしてきたが、遂にその「本性」を露呈してしまったということではないだろうか。
この本筋を見ないと、言論弾圧の正体は見えてこない。
(なお、この問題に関しては書きたいことが多すぎて、一度に書いてしまうと、読んで下さる方もお疲れになることだろう。申し訳ないので、追ってまた稿を改める。)
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。