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マイナス金利国内企業、マイナス金利拡大に反対8割、投資にも寄与せず
幅広い業種が導入自体をマイナス評価
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4月21日、ロイター企業調査によると、日銀(写真)が導入したマイナス金利の拡大に8割近い企業が反対しており、導入自体が失敗との見方も目立った。2月撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter/Files)
4月のロイター企業調査によると、日銀が導入したマイナス金利の拡大に8割近い企業が反対しており、導入自体が失敗との見方も目立った。
マイナス金利での資金調達を検討している企業は1割強にとどまり、資金調達コスト低下が設備投資計画に寄与するとはみていない企業が全体の3分の2を占めた。
マイナス金利政策は、導入から1カ月以上経過してむしろ評価が下がっている。
この調査はロイター短観と同じ期間・対象企業で実施。資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に4月1日─15日に実施。調査対象企業は400社で、うち回答社数は245社程度。
マイナス金利のさらなる拡大について、賛成との回答は22%、反対は78%となった。
前月調査では、導入後間もないことからまだ影響が見通せず、反対の声は6割程度だったが、今月調査では厳しい見方が増加。「導入は失敗だったと思われる」(運輸)、「マイナス金利で改善されたものがない」(化学)、「効果が疑問視されている」(鉄鋼)などといった声が聞かれ、幅広い業種で導入自体への評価が芳しくない。
悪影響について、具体的には「設備投資拡大など景気浮揚には結びつかず、逆に運用収益減の悪影響がある」(食品)、「かえって貧富の差が拡大する」(紙・パルプ)、「金融機関の収益悪化が他の業界に思わぬ影響を及ぼす可能性」(運輸)などの弊害が挙げられている。また「預金金利がつかないことへの心理的悪影響は大きい」(サービス)、「将来に不安」(その他製造業)、「国民感覚とズレが大き過ぎる」(サービス)といったマインド面の影響を指摘する声も多い。
他方、賛成意見としては「円安につながる」(化学)、「資金調達に有効に働き、住宅ローン金利の低下が受注拡大につながる」(建設)など、自社の業況への直接的なメリットを挙げる声のほか、「銀行のやる気を引き出したい」(小売)などと金融機関の努力を促す声も複数見受けられた。
日銀が期待する企業活動活発化への動きは今のところ鈍い。すでに手元資金を潤沢に保有している企業が多く、マイナス金利を活用して社債やCP発行などの資金調達を「検討する」との回答は12%にとどまり、「全く検討しない」が88%に達した。
資金調達コストの低下が16年度の設備投資計画に寄与するとの回答は35%。全く関係がないとの回答が65%となった。
(中川泉 梶本哲史 編集:石田仁志)
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