習近平のブレーンは誰だ?――7人の「影軍団」から読み解く
このときの会議室はものすごく狭くて、左右の間に隙間がなく、人数も多いので真っ直ぐに横一列に並ぶと、自分の列の端の人の顔は見えない。
関係者の周辺から直接聞いた話によれば、このとき習近平は会議開始前の雑談の中でオバマに言おうとしたあるデータに関して数値が思い出せず、劉鶴に聞いたという。劉鶴は一番奥に座っていたので、間に人が多すぎて声が遠い。すると、習近平のすぐ隣に座っていた王滬寧が咄嗟に椅子を後ろに引き、劉鶴と習近平の間を縮めようとした。それを見た国務委員の楊潔箎(よう・けっち)もあわてて自分の椅子を後ろに引き、習近平が劉鶴に聞きやすいようにしてあげたという。その結果、王滬寧と楊潔チが第二列にいるような形になってしまったとのことだ。
ところが、この座席の位置に根拠を置いて、「王滬寧が第二線に退いた」として、次期チャイナ・セブン(習近平政権における中共中央政治局常務委委員7人)の座席を占う分析が現れ始めた。
2017年に開催される第19回党大会で、習近平と李克強の2人を除いた5人のチャイナ・セブンが停年で退き、新しい5人が入ってくるが、その中に劉鶴が入るかもしれないという予測を、この「座席」を根拠に論議しているのである。王滬寧が第一線から退いて、上記3の劉鶴にその「席」を譲るのではないかと分析しているのだ。
劉鶴は、中共中央政治局委員は言うに及ばず、中共中央委員でさえ、まだなったばかり。2012年の第18回党大会で、初めて平の共産党員から中央委員に選ばれた。しかも中共中央財経領導小組の弁公室の主任でしかない。小組の方には権威があるが、弁公室というのは、その小組の事務局に過ぎない。弁公室には決定権などないのに、劉鶴のことを最高決定機関の主任と書いている日本の報道があるのを知って驚いた。筆者はかつて中国政府の国務院西部開発領導小組の弁公室の一部局の人材開発顧問に就いていたことがあるが、弁公室(事務局)と小組では雲泥の差。弁公室は「小組で決まった事務を遂行する」だけの事務組織にすぎないのである。
習近平はもちろん劉鶴を重んじているが、劉鶴の身分から言えば、来年の第19回党大会でせいぜい入って中共中央政治局委員といったところだろう。王滬寧ならいざ知らず、劉鶴がチャイナ・セブンに入る可能性は非常に低い。もっとも、王滬寧がチャイナ・セブン入りして空いたポストに、後継者として劉鶴が(中共中央政治局委員として)滑り込むという構図は十分に考えられる。
中央テレビ局CCTVでは出席者の名前をいつも通り「習近平、王滬寧、栗戦書、楊潔箎......」の順番で読み上げていた。