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【再録】昭和天皇インタビューを私はいかにして実現したか

2016年3月23日(水)15時51分
バーナード・クリッシャー(元東京支局長)

 再び入室すると、天皇が出迎えてくれたので、とっさに手を差し伸べた。私は握手をしながら「こんなに興奮しているのは生まれて初めてです」と言った。天皇はにっこりと笑った。

 私たちは着席し、インタビューを始めた。私は事前に提出したリストとは質問の順序を変え、いくつか追加の問いを加えた。

 天皇はメモを持っていなかった。藤山によると、天皇は回答内容について側近のアドバイスを求めなかった。前日、私の質問を読み、じっくりと回答を考えていたという。最も強く印象に残っている回答は、常に憲法にのっとって行動してきたという言葉だ。

 インタビュー時間は30分のはずだったが、予定を過ぎても制止されなかった。私は32分経過した時点で自発的に打ち切った。

 その後、近くの部屋に場所を移し、藤山同席の下でテープを起こした。藤山は、見事なインタビューだったと言ってくれた。

 私は昭和天皇から、非常に謙虚で控えめな人物という印象を受けた。一部の外国人歴史家が主張するように、彼が第二次大戦の舞台裏で戦略家の役割を果たしたとは思えない。私の記憶に残る天皇は、日本きっての紳士だ。

[筆者]
バーナード・クリッシャー Bernard Krisher
31年ドイツ生まれ。41年アメリカに移住。62~80年、ニューズウィーク東京支局で特派員、支局長を務める。その後、東京でカンボジア支援にあたった。

※この記者によるインタビュー記事はこちら:【再録】1975年、たった一度の昭和天皇単独インタビュー

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[2006年2月 1日号掲載]

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