民主主義をかなぐり捨てたトルコ
「テロリストの宣伝工作」とは、トルコ南東部のクルド人武装組織に対する治安部隊の攻撃を中止するよう、公式に政府に呼び掛けたこと。トルコ政府はクルド人が多数を占める南東部の一部地域を包囲し、深刻な人道危機を招いていると、クルド人組織は訴えている。
誰にとっても危険な国
HDPのセラハッティン・デミルタス共同議長は今月に入って本誌の取材に応じ、エルドアンは「独裁体制」を固めつつあり、クルド人に限らず「トルコでは誰もが大きな危険にさらされている」と懸念を表した。
過激派対策法改定の法的根拠について、与党・公正発展党(AKP)の法律顧問はロイターにこう語っている。「テロ行為に直接的に関わっていなくても、思想的に支持した場合、完全なテロ犯罪ではないが、やや軽度のテロ犯罪とみなせる。われわれは対策法の範囲を拡大するつもりだ」
【参考記事】アメリカがトルコのクルド人空爆を容認
トルコの治安状況は悪化の一途をたどっている。混乱が続く隣国シリアで、クルド人武装組織「民主連合党(PYD)」「人民防衛隊(YPG)」がトルコとの国境地帯で支配圏を拡大。その影響でトルコ国内でもクルド人の分離独立の動きが活発化し、昨年7月にはトルコ軍とPKKの衝突が再燃。2年余り守られてきた停戦協定は脆くも崩れた。昨年11月には、トルコ空軍がシリアとの国境地帯に展開するPKK部隊に空爆も実施。
84年から13年の停戦成立まで続いたトルコ軍とPKKの武力衝突では4万人余りの死者が出ている。