最新記事

全人代

習近平政権初の五カ年計画発表――中国の苦悩にじむ全人代

2016年3月7日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2.今年わが国の発展が直面している困難は非常に多いため、直面している挑戦はさらに厳しくなる。そのため、われわれは激戦を戦うという十分な用意をしなくてはならない。国内外の影響により経済の下振れ圧力は大きくなるが、マクロコントロールと人民の知恵で克服できる(筆者注:ここも苦しい言い訳で、精神論では克服できないはず)。

3.今年の財政赤字は2.18兆元(38兆円)となり、昨年より5600億元増える可能性がある(以下、人民元を日本円に換算するには17.44倍すればいいが、日本円表示は省略する)。赤字率は3%増となる。そのうち、中央財政赤字は1.4兆元で、地方財政赤字は7800億元となる。地方債務に関しては、4000億元分を地方政府が引き続き債券を発行することによって置き換える。

4.財政体制改革を加速させる(長すぎるので省略)。

5.金融体制改革を深化させる(長すぎるので省略)。

6.供給サイドの構造改革を強化する。

7.イノベーションを進めるために知的財産保護の強化。

8.過剰生産問題の解決。ゾンビ企業を淘汰するため、1000億元の資金を投じて(失業者急増などの)リスクを回避する(筆者注:「ゾンビ企業」とは、すでに休業状態に入っている地方の不良国有企業を閉鎖せずに、地方政府が財政輸血をし続けている企業のこと)。

9.国有企業改革を強力に推し進める。効率の悪い国有企業を再編淘汰する。特に所有権に関する民間との混合制を推進し、ハイレベルの人材を経営に当てる。一方、電力、電信、交通、石油、天然ガスなど骨幹となる国有企業に関してはその価値を高めるべく努力する。(筆者注:国有企業の構造改革を謳いながら、一方では国有企業の価値を高める努力もするという、抜けきれない一党支配体制の矛盾が、ここにも表れている。)

10.消費者の権限を守り、消費けん引型の経済を目指す。

11.今年は第13次5カ年計画の最初の1年に当たるので、構造調整を行いながら有効な投資を行う。たとえば鉄道投資8000億元以上、高速道路投資1.65兆元などの中央財政支出を行なう。

12.農業人口の市民化を加速させるために、すでに既存の都市に流れてきた外来人口問題を解決するため「人・地・銭」政策を進める。そのためには(都市にいる2.67億人の農民工)に(ゴーストタウン化した)空きマンションを低所得者向け住宅としてあてがう(筆者注:長いので省略するが、「国家新型城鎮化(都市化)計画」に関しては拙著『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』のp.250などを参照していただきたい)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独小売売上高指数、12月前月比-1.6% 予想外の

ワールド

トランプ氏の米国版「アイアンドーム」構想、ロシアが

ビジネス

ECB政策金利、春か夏にも中立金利に=フィンランド

ビジネス

ユーロ圏製造業、米関税より中国製品流入を警戒=EC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中