習近平政権初の五カ年計画発表――中国の苦悩にじむ全人代
1. 中高速度の経済成長を目指す。2020年までに1人当たりの平均収入を2010年の2倍にする。GDP成長率は平均6.5%を目指す。産業の構造転換を推進し、2020年までにGDP90兆円(1570兆円)に達する。(筆者注:2006年の第11次五カ年計画ではGDP成長率を7.5%に設定し、2011年の第12次五カ年計画では7.0%に設定した。それが今回は6.5%となり、0.5%ずつ減少している。11年目で、目標値は一段と低くなった。)
2. イノベーションを重視。国際的競争力のあるフロントランナーを育成し、2020年まえに経済成長に対する科学技術の貢献度が60%に達するようにする。
3. 国家新型城鎮化(都市化)計画(2014年~2020年)の推進と完成。定住人口の都市化率60%および戸籍人口の都市化率45%を目指す。
4. 環境保護。生態文明建設。今後5年間で、用水量、エネルギー消費量および二酸化炭素放出量をそれぞれ23%、15%、18%減少させる。空気汚染に関して良好状態の日数が80%を越えるようにする。
5. 改革開放を深化させ、構造改革して新体制を構築する。(筆者注:内容が複雑で達成目標が明確でないので省略するが、ひとことで言えば、中国の一党支配体制が内包している構造的矛盾から抜け出せない中国の姿が浮き彫りになっていると言える。李克強首相の演説だけでは解読できないが、真に改革開放を深化させ構造改革を断行して新体制を作れば、それは一党支配体制の崩壊へと行きつくので、本当の意味での構造改革も新体制構築も、実はできない。そこには根本的内部矛盾と中国の限界がある。)
6. 民生福祉問題を改善する。労働年齢が受けている教育年数を、現在の10.23年から10.8年まで引き上げる。平均寿命を1歳引き上げる。5000万人を貧困から脱却させる。中国は現在、9億の労働人口のうち、約1億人が高等教育あるいは(職業学校などの)専門教育を受けているので、人材において強い原動力を持っている。
2016年の重点活動――実際は6.5%の目標値と構造改革の矛盾
3月4日付けの本コラム<「神曲」ラップと「ギャップ萌え」で党宣伝をする中国――若者に迎合し>で説明した「四つの全面」を国家基本戦略として、以下の目標を立てるとした。
1.GDP成長率は6.5%~7%、国民消費価格の上げ幅は3%前後とする。都市における新規雇用者数1000万人以上、失業率4.5%以内を目指す(筆者注:辛うじて区間を示す形で7%に引っかかってはいるが、これはほぼ気分の問題で、実際はこのたびの新五カ年計画と同じように、下限の6.5%を目標としていると解釈していいだろう)。