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朝鮮半島北朝鮮が韓国に「Facebookでハニートラップ」攻撃
政府関係者のスマホにウイルスを送ったり、美女写真を使ってフェイスブックで友達申請をしたり、韓国へのサイバー攻撃を活発化させている
元帥様のために 「喜び組」が有名だが、北朝鮮政府は以前から美貌の女性を政治利用してきた(写真は2013年にキノコ工場を視察した金正恩〔キム・ジョンウン〕第一書記、朝鮮中央通信〔KCNA〕が公表) KCNA-REUTERS
北朝鮮のサイバー攻撃が活発化している。なかには「色仕掛け」を駆使した驚くべき手口があった。
韓国の国家情報院(国情院)によると、北朝鮮が2月末から3月初めにかけて、韓国政府の主要人物が保有するスマートフォンにサイバー攻撃を仕掛け、一部が成功していたことが判明した。
その手口は、攻撃対象のスマホに悪性コード(ウイルス)を送り付ける方式。仕掛けられた約2割がウイルスに感染し、韓国政府の主要人物の電話番号、通話の内訳、メールの内容までが持ち去られ、なかには軍関連責任者も含まれていたという。南北間の緊張が高まっているだけに、韓国政府も北朝鮮のサイバー攻撃に警戒を強めている。
しかし、北朝鮮が仕掛けたのは「スマホ攻撃」だけではなかった。国情院が明らかにした北朝鮮の驚くべきサイバー戦術、それはフェイスブックを通じた「ハニートラップ」。
北朝鮮がフェイスブックを通じて仕掛けた「ハニートラップ」は、まず実在するNGO機関「平和問題研究所」を装った偽アカウントを作成。美貌の女性写真を掲載し、韓国政府関係者に「友達申請」する。そして、関係者と繋がれば何らかの秘密資料などを要求するというもの。資料の譲渡があったかどうかは不明だが、数十人の関係者が「友達」になっていたという。
実に大胆かつ、ばかばかしい手口と言えるが、美女を政治に最大限活用する北朝鮮らしいといえばらしい。そもそも、北朝鮮には「喜び組」という美女を利用した統治システムが存在する。
(参考記事:北朝鮮の「喜び組」に新証言...韓国テレビ「最高指導層の夜の奉仕は木蘭組」)
過去には国際スポーツ大会に「美女応援団」を派遣して韓国男性を虜にした。海外の北朝鮮レストランでは、美人接待で外貨を稼ぐなど、体制維持のためには女性の人権そっちのけで、手段を問わない。もっとも、なかにはレストランの美人接待員が、韓国人男性と恋に落ちてしまい「愛の脱北逃避行」に走るケースもあるようだ。
(参考記事:中国で失踪...北朝鮮「美人接待員」たちの素顔)
今のところ、大きな実害は報告されていないが、何人かが繋がってしまったという点では、韓国も脇が甘すぎる。南北間の緊張が高まるなか、まさか北朝鮮がフェイスブックで「ハニートラップ」を仕掛けてくるとは思っていなかったのかもしれない。しかし、相手は女性の人権などお構いなく政治攻勢を仕掛けてくる国家・北朝鮮であることを忘れてはならない。
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ――中朝国境滞在記』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)がある。