最新記事

インタビュー

【再録】1975年、たった一度の昭和天皇単独インタビュー

2016年3月23日(水)15時50分

――科学者として海洋生物学者として、環境問題の現状、日本や世界に広まっている公害についてどんな意見をおもちか。

 公害にはさまざまな種類があります。とくに取り上げることができるのは石油による汚染です。世界の国々が協力して防止すべきです。人々が注意深く自然に対処すれば、環境を保護し、生命と自然を守ることは可能だと思います。

――これまで最もうれしかったこと、心が痛んだことは?

 最もうれしい思い出は、50年前の欧州視察と、数年前に皇后と再び欧州を訪れたことです。そして今は、アメリカ訪問を楽しみにしています。

 最も悲しかったのは、なんといっても戦争です。

――戦後の日本社会における価値観の変化をどう思われるか。また陛下は、現在の道徳的な価値観について納得しておられるのか。

 昔のほうがよかったかどうかは、むずかしい問題です。昔にも悪いところはあり、現在にもいいところはありますから、すぐには比較できないと思います。いつになっても、理想の時代というのはありえないものです。

――次代の天皇となられる皇太子明仁親王には、天皇の責務に関してどのような助言をされるか。

 皇太子には皇太子なりの意見があるかもしれません。しかし国民の安寧のために行動することが皇室の伝統です。皇太子にもそのような態度を希望します。

――将来は、もっと国民に近い、開かれた皇室になるとお考えか。

 私はそれを常に望んでいます。しかし時勢によって、必ずしもそれは容易ではありません。

――陛下は一日だけ一人の一般人となって、誰にも気づかれずに皇居を抜け出し、好きなことをしたいと考えられたことはあるか。もしそうなら、何をしてみたいか。

 心の底では、それを望んできました。マーク・トウェインの『王子と乞食』のようなものでしょうか。しかし、もしそれが実現したとしても、結末はおそらく物語と同じようなことになるのかもしれません。

――(日本で人気のあった)アメリカのドラマ『刑事コロンボ』を陛下も見るそうだが、どんなところを楽しんでおられるのか。

 時間の都合がつかず、私自身はその番組を見ることはできませんでしたが、一般の国民が非常に楽しんで見たと聞いています。 


※このインタビューを行った記者の回顧録はこちら:【再録】昭和天皇インタビューを私はいかにして実現したか

《「ニューズウィーク日本版」最新号とバックナンバーはこちら》

《「ニューズウィーク日本版 創刊30周年 ウェブ特別企画」の記事一覧》

30yrslogo135.jpg



[2006年2月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オーストラリア年次予算、2年連続で黒字見込み 14

ビジネス

SUBARU、トヨタと共同開発のEV相互供給 26

ビジネス

対仏投資促進イベント、160億ドル獲得見込み 昨年

ワールド

イスラエルの格付け据え置き、見通しネガティブ=ムー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中