最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

トランプの巧妙な選挙戦略、炎上ツイートと群がるメディア

2016年2月23日(火)16時00分
渡辺由佳里(エッセイスト)

pereport160223-02.jpg

トランプのラリーでは、参加者が盛んにトランプの画像、映像を収めようとカメラを構えている(筆者撮影)

 両陣営の戦略の違いは、20世紀後半のアメリカの国民性と、インターネット時代の国民性の違いも象徴している。

 インターネット時代の群集心理を最大限に活用しているのがトランプだ。彼は、移民、女性、イスラム教徒、ライバルなどへの暴言を繰り返すが、これは彼自身の意見を反映しているだけでなく、資金を効果的に使うための戦略でもある。

「自分の資金だけで選挙運動をしている」というトランプの主張には誇張があるが、キャンペーンのコストパフォーマンスが良いのは事実だ。アイオワ州の予備選では、ジェブ・ブッシュが1票の獲得に費やしたコストが5200ドルだったのに対し、トランプは共和党のライバル候補の中で最少の300ドルだった 。トランプは、ほとんど何もキャンペーンをせずにアイオワの予備選で2位になっている。そして、その武器はツイッターを中心にしたソーシャルメディアだ。

 トランプは、政治にかぎらずその時話題になっていることについて、素早く極端な意見をツイートする。たとえば、ケイティ・ペリーが離婚したときには、直接本人に「ラッセル・ブランドみたいなルーザー(負け犬)と結婚するなんて、いったい何を考えていたんだ?」と批判するし、エボラ熱が話題になると、オバマ大統領を名指しして「エボラ熱が流行っている国からのフライトを止めろ」と命じるといった調子だ。

【参考記事】トランプは今や共和党支持者の大半を支配し操っている

 こうしたツイートは必ず炎上するので、テレビ番組はトランプの動向を連日何時間も語り、インターネットにもトランプの記事があふれる。ライバルたちが、あまり効果がないコマーシャルに数百万ドルもかけているあいだに、トランプはタダでメディアに無料PRをしてもらっているようなものだ。

 日本でも、暴言や他人との言い争いが多い人のほうがツイッターのフォロワーは多くなるが、トランプは大統領選に出馬する前から経験としてそれを知っている。無料のツイッターでフォロワーを集め、マスメディアに無料のPRをさせ、1回で数千人を集めることができるラリーで時間とコストの節約をする。それがトランプの巧妙な戦略だ。

 ニューハンプシャー予備選までそのトランプと正反対の選挙戦を行っていたのが、ケーシックだ。

 政治家としてのキャリアが長く、44歳のマルコ・ルビオや45歳のテッド・クルーズのような新鮮さはない。そして、企業からの資金もジェブ・ブッシュにははるかに及ばない。有力候補とみなされていなかったケーシックは、テレビで話題にならず、ディベートでもなかなか意見を言う時間を与えられなかった。そんな彼がメッセージを伝える場は、タウンホール・ミーティングしかなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:日本の成長率下方修正へ、利上げ1%で

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部に進入し「安全地帯」拡大 学

ビジネス

旧村上ファンド系、フジメディアHD株を買い増し 6

ワールド

与野党7党首が会談、トランプ関税への対応巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 2
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 5
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 6
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 7
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中