最新記事

中台関係

南シナ海より「台湾問題」、独立派圧勝で警戒強める中国

アジアで最も敏感な安全保障問題のエリアが再び脚光を集める

2016年1月19日(火)08時06分

1月17日、中国にとって台湾問題は、敏感さと重要度の点で他のいかなる領土問題にも勝るものだ。写真は台湾総統選で、民進党の蔡英文主席が当選との暫定結果に喜ぶ支持者。台北で16日撮影(2016年 ロイター/Damir Sagolj)

 東シナ海、南シナ海の領有権問題をめぐり、すでに強硬姿勢を強めている中国にとって、台湾問題は、敏感さと重要度の点で他のいかなる領土問題にも勝るものだ。

 16日に投開票された台湾の総統選挙では、台湾独立を志向する最大野党、民主進歩党(民進党)の蔡英文主席が与党国民党候補らに圧勝し、当選を果たした。8年ぶりに政権交代が行われることとなる台湾は、アジアで最も敏感な安全保障問題の1つとして、再びスポットライトを浴びることになる。

 1949年に中国共産党との内戦に敗れた国民党が台湾に逃れて以来、中国は台湾を自国の神聖な領土と主張している。台湾の推定によれば、中国は数百発のミサイルを台湾に向けており、台湾を支配下に置くための武力行使を放棄してもいない。

 当時の台湾国防部は定期的なものだとしたが、中国は昨年9月に台湾海峡で異例の実弾演習を実施している。

 「彼女(蔡氏)は中国政府の非常に現実的な指導者を相手にすることになる」と、国立台湾大学の朱雲漢・教授は指摘する。

 しかし同時に蔡氏は、自身の支持者、特に急進的で独立を志向する若い世代に対して責任を持たねばならない。「そのことが彼女に戦略的な余地をあまり与えない」と朱教授は語る。

 2008年に親中である国民党の馬英九氏が政権の座を握って以降、通商や観光で協定を締結するなど中台関係はかつてないほど緊張緩和が進んでいた。

 蔡氏率いる民進党は、再び緊張をもたらすことにはならないと主張するのに苦心しているようだ。蔡氏は勝利宣言で中国問題について触れ、平和の維持に努めるとしたうえで、台湾の権益と主権は守ると語った。

苦い果実

台湾の独立に反対する立場を繰り返す中国は、比較的慎重な姿勢を見せてはいるものの、先には大きな不安が待ち受けている。新華社は、独立に向けたいかなる動きも、台湾を滅ぼすことになる「毒薬」のようなものだと警告した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中