最新記事

政治

トランプは、ヨーロッパを不安にさせる「醜いアメリカ人」

以前、この手のやからを野放しにしたツケはヒトラーだった

2015年12月15日(火)19時23分
アダム・リボア

勢いを止められるか? 最近、トランプ(左)を抜いてアイオワ州で支持率トップに立ったテッド・クルーズ上院議員 Jonathan Ernst-REUTERS

「醜いアメリカ人」が帰ってきた。しかも彼は、まもなく大統領のイスに座ることになるかもしれない。2016年の大統領選挙に向け共和党候補の指名争いに参加している億万長者のドナルド・トランプは先日、「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」と述べて、世界中で激しい怒りを買っている。

 イギリスでは、トランプの入国禁止を求めて50万以上の人々が嘆願書に署名した。ヒラリー・クリントン前国務長官とディック・チェイニー元国防長官、ポール・ライアン下院議長は、右も左も団結してトランプを非難した。『ハリー・ポッター』の原作者J・K・ローリングは、トランプはハリーの仇敵ヴォルデモート卿以上の極悪人だとツイートしている。

 トランプのイスラム入国禁止発言は、「単なる右翼的発言ではすまされない。常軌を逸している」と言うのは、英王立統合軍事研究所(RUSI)の研究員で『Muslims of Europe: The 'Other' Europeans』の著者であるH・A・ヘリヤーだ。「この発言は、10億人以上の人々に対する正面攻撃だ。すでに世界中に拡散しているが、彼にやめるつもりはないだろう」

 しかしアメリカ国内では、この発言にトランプが足を引っ張られることはなさそうだ。それどころか、発言が攻撃的になればなるほど支持率は伸びている。NBCニュースとウォール・ストリート・ジャーナル紙が行った世論調査では、共和党を支持する有権者のうち、トランプのイスラム入国禁止案に42%が「賛成」と回答。「反対」は39%だった。「トランプは、自分は正しいと考えている。この発言で自分の人気は高まっているし、共和党内のかなりの人数も同じような考えを持っていると思っている」とヘリヤーは言う。

トランプ発言はフランスでは違法かも

 ヨーロッパ諸国はこの状況を警戒している。「トランプの言動は、ヨーロッパ人が非常に嫌う『醜いアメリカ人』の要素をすべて満たしている」と指摘するのは、国際情勢が専門のシンクタンク、アトランティック・カウンシルのロビー・グレイマーだ。「彼は浅はかで粗暴。ドイツ人は、この種の金持ちには強い警戒心を抱く。フランスでは、トランプの発言は違法かもしれない。外交政策には思慮がなく、一貫性もない。かつて政治家はリスクを嫌い慎重に行動するものだったが、トランプの場合は公の場で話をでっち上げたら人々がそれを信じてしまった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投

ビジネス

JAM、25年春闘で過去最大のベア要求へ 月額1万

ワールド

ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トラン

ビジネス

日経平均は小幅に3日続伸、小売関連が堅調 円安も支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 5
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 7
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 10
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中