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アリババが香港英字紙買収――馬雲と習近平の絶妙な関係

2015年12月14日(月)17時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


馬雲の「江南会」に「消息不明」になった郭広昌(復星集団CEO)が

 湖畔大学創設メンバーは、「江南会」創設メンバーの8人と同じだ。

 この8人の中に、12月10日から連絡が取れず「消息不明」となった復星集団のCEO郭広昌がいる。郭広昌は、今年11月に北海道上川管内占冠村にある星野リゾートトマムを買収したことで注目された人物だ。

 失踪した原因は、どうやら光明集団の元CEO王宗南と関連があるらしい。王宗南は公金横領により上海市第二中級人民法院(地方裁判所)で判決を待つ身だが、審査過程で復星集団と便宜供与などに関する不正な利害関係があったことが判明している。

 馬雲も一歩まちがえれば危なかったことになる。

 令計画が捕まり、「私人会所」が取り調べの対象となることを知った瞬間から、馬雲の機転はフル回転し始めた。

 イノベーションに国運をかける習近平政権の泣き所を突いて「湖畔大学」を設立させただけでなく、北京政府にとって頭が痛い香港の民主化運動を抑えるためのメディアを買収してしまうという戦略に出たわけだ。

 今年9月の習近平訪米のときに随行した馬雲は、経済フォーラムにおける講演の寸前に、26か所も講演原稿を修正して、「習近平国家主席を讃える文言」に変換させたと言われている。
さすが、創業1年で『フォーブス』の表紙を飾っただけのことはある。

 消息不明になった郭広昌のような目に遭わないよう、危機を回避する身変わりの速さを心得ている。

 今年11月11日に、中国の独身者のためのネットショップフェアがあったが、大成功した馬雲に、李克強が祝電を送るという、こちらも変わり身の速さを見せている。

 馬雲はまちがいなく、危機一髪で難を逃れただけでなく、災いを「福?」に転じさせたということができよう。 

 これからは習近平政権の「新宣伝部」として目ざとく手を打っていくにちがいない。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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