最新記事

米社会

【統計】銃犯罪の多さは銃規制の緩さと比例するか

カリフォルニアでまたも乱射事件が起きたが、州別のデータを取ると同州は全米で最も銃規制が厳しく、人口あたりの死亡者数も少ない

2015年12月3日(木)17時25分
パルマー・ギブス

繰り返される悲劇 カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で2日、銃乱射事件が発生し、14人が死亡、車で逃走した容疑者3人のうち2人は射殺され、1人が拘束された(事件直後に警戒にあたる警察官) Mario Anzuoni- REUTERS

 今年10月、オレゴン州ローズバーグのアムクワ・コミュニティ・カレッジで発生した銃乱射事件を受けて発表した声明の中で、バラク・オバマ米大統領は、同様の銃犯罪が起きた地名を列挙した。

 コロンバイン高校(コロラド州)、バージニア工科大学、フォートフッド陸軍基地(テキサス州)、トゥーソン(アリゾナ州)、オーロラ市(コロラド州)、サンディフック小学校(コネチカット州)、ネイビー・ヤード(ワシントン海軍工廠)、イスラビスタ(カリフォルニア州)、チャールストン(サウスカロライナ州)、そして今回のローズバーグ――。

 これらはみな、アメリカにおける「銃犯罪、暴力、銃規制」という、複雑に絡まり合った問題を象徴する場所だ。

 オバマはこれまでと同様の主張を繰り返し、ローズバーグで銃乱射事件が起きたのは、米連邦議会と各州政府が、銃を販売する際の安全確認と身元照会を定める法律の見直しを迫られている証拠だと述べた。

 InsideGov(編集部注:当記事の提供元Graphiqの姉妹サイト)は、「銃による暴力防止法律センター」と「銃による暴力を防ぐブレイディ運動」のデータをもとに、銃規制法が州によってどう異なっているかを調査した。両団体はいずれも、より効果的な銃規制の導入を目指しており、銃規制の厳しさに応じて各州を0点から100点のスコアで評価している。スコアが上がるほど規制が厳しいという意味だ。

 上の地図を見るとわかるように、東海岸の州は、銃規制に関してスコアが高い傾向がある。規制の厳しさで最上位の6州のうち5つは東海岸北部の州で、具体的にはコネチカット州(84点)、ニュージャージー州(82.5点)、メリーランド州(80.5点)、ニューヨーク州(79.5点)、マサチューセッツ州(74.5点)だ。

 しかし、銃規制で89点を獲得し、総合1位となったのは西海岸のカリフォルニア州だった。銃による暴力防止法律センターによれば、カリフォルニア州では、銃を販売できるのは認可を受けた販売業者のみと定められている。また、購入者に関しては身元照会が必要なほか、筆記試験に合格して銃を安全に取り扱えることを証明するHSC(Handgun Safety Certificate)を取得しなければならない。同州ではさらに、1カ月に購入できるハンドガンは1丁と決められていて、銃の売買は記録に残されている。

 一方、スコアが最も低かったのは、アリゾナ州(6点)、アラスカ州(7点)、ワイオミング州(7点)、サウスダコタ州(9点)だ。カンザス、ミシシッピ、バーモントの3州は、10点で5位タイとなった。

 銃による暴力防止法律センターのウェブサイトでは、各州の銃規制法を紹介しており、アリゾナ州の場合は、州の認可がなくても銃を販売できることや、1度に購入できる銃の数に制限がないことが説明されている。さらに、ライセンスを所持していなくても公共の場で銃を隠し持ったり、攻撃用ライフルや50口径ライフル、大型弾倉を購入・譲渡したりできるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フジHD、純利益7割減 フジテレビ広告収入減で下方

ビジネス

武田薬、通期の営業益3440億円に上方修正 市場予

ビジネス

ドイツ銀行、第4四半期は予想以上の減益 コスト削減

ビジネス

キヤノン、メディカル事業で1651億円減損 前12
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 7
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中