最新記事

中東

トルコがロシア軍機撃墜、プーチン大統領「決して許さない」

パリ同時多発攻撃後に高まったロシアと西側のイスラム国掃討に向けた連携の機運に危機

2015年11月25日(水)16時47分

11月24日、トルコがロシア軍用機を撃墜した。写真はシリアの山岳地帯で24日撮影(2015年 ロイター)

 トルコは24日、度重なる警告にもかかわらず領空を侵犯したとして、シリア国境付近でロシアの軍用機を撃墜。ソビエト時代も含め、北大西洋条約機構(NATO)加盟国によるロシア軍機撃墜が確認されたのは1950年代以来初めてで、緊張が高まっている。

 ロシアのプーチン大統領は、「テロリストの共犯者ら」による背信行為としてトルコを強く非難。両国関係に重大な影響をもたらすとの認識を示し、「このような犯罪をわれわれは決して許さない」とした。

 プーチン大統領によると、ロシア機がトルコ国境から1キロ離れたシリア領空を高度6000メートルで飛行中、F━16機が発射した空対空ミサイルの攻撃を受けた。トルコ国境から4キロ離れたシリア領内に墜落したとしている。

 またロシア機がトルコに脅威を与えた事実は存在せず、シリア領内の過激派組織「イスラム国」を攻撃する任務を実行していたにすぎないと説明した。

 一方、トルコは国連安全保障理事会に対し、領空を侵犯した国籍不明の機体を同国が撃墜したと説明。領空を侵犯した2機は、5分間に10回警告を発したにもかかわらず、17秒間にわたりトルコ上空を約1.6キロ以上飛行したとしている。トルコには国家安全保障上の理由から、こうした行動に出る権利があると主張した。

 「回避するためにわれわれが最善を尽くしたことを誰も疑うべきではない。だが、トルコが自国の国境を守る権利を皆が尊重すべきだ」とトルコのエルドアン大統領は首都アンカラで演説した。

 同大統領はまた、ロシアによるシリアへの空爆についても、過去数週間で自国領空は数回侵犯されたが、トルコの「冷静さ」があったからこそ最悪な事態を防ぐことができたと強調した。

 ロシア、トルコの両国はそれぞれの大使を呼び出し抗議している。ロシアのラブロフ外相は25日に予定されていたトルコ訪問をキャンセルし、国民に対しても渡航を控えるよう求めた。ロシア国防省も対抗措置を準備していることを明らかにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中