【地図で読む】人類は1987年以降、資源の「債務超過」状態にある
消費社会が地球に与える負の影響を計算する測定単位「エコロジカル・フットプリント」を、いかに減らすかが課題だ
例えば、テロ組織のISIS(自称イスラム国、別名ISIL)はイラクとシリアにまたがる地域を支配し、シリア難民はヨーロッパだけでなく、隣国のトルコ、レバノン、ヨルダンにも多く逃れている。例えば、米軍の駆逐艦派遣により米中の緊張が高まっているのは南シナ海で、そこでは中国以外にも、ブルネイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムが領有権を主張している。
そういったニュースを聞いても、ピンとこない人は少なくないだろう。シリアは中東のどのあたりにある? 南シナ海はどこからどこまでを指す? 日々流れてくるニュースは膨大だし、世界はあまりに複雑だ。いかに大切でも、「世界の今」を理解するのは簡単ではない。
そんなときに役立つのが、地図だ――。フランスの人気TV番組から生まれた『最新 地図で読む世界情勢 これだけは知っておきたい世界のこと』(鳥取絹子訳、CCCメディアハウス)は、その名のとおり、地図を軸に据えた入門書。フランス地政学の第一人者であるジャン=クリストフ・ヴィクトルと、高校(リセ)の地理・歴史教師であるドミニク・フシャールおよびカトリーヌ・バリシュニコフが、美しい地図と写真でわかりやすく解説している。
移民や難民、貧困ライン、温室効果ガス、ジェネリック医薬品、スラム街、デジタル・ディバイド、多国籍企業、マイクロクレジット、生物多様性......。「世界のしくみがひと目でわかる!」と謳い、50以上の地図を収録した本書から、5つのテーマを抜粋し、5回に分けて掲載する。
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『最新 地図で読む世界情勢
――これだけは知っておきたい世界のこと』
ジャン=クリストフ・ヴィクトル、ドミニク・フシャール、
カトリーヌ・バリシュニコフ 著
鳥取絹子 訳
CCCメディアハウス
※第1回【地図で読む】サッカーもジーンズも、グローバル化でこう変わった:はこちら
※第2回【地図で読む】18歳以下の「子供兵士」は世界に約25万人いる:はこちら
※第3回【地図で読む】国際的な移民の数は世界人口の3%にすぎない:はこちら
※第4回【地図で読む】この宗教地図が間違っている4つの理由:はこちら
《私たちは両親の土地を相続しているのではない、子供たちの土地を借りているのである》――レオポール・セダール・サンゴール[セネガル初代大統領で作家、詩人]
<上の地図 人類すべてに地球は一つだけ>
エコロジカル・フットプリントは、人間が消費するものを生産することと、そこから出るゴミを捨てることで、自然に及ぼす負荷を計算する。人類が1年に必要とする資源は地球の再生能力を超えており、私たちが1年で使用する資源を再生するには、1年と4カ月が必要になる。私たちは1987 年以降「債務超過」状態にある。
エコロジカル・フットプリントをどのように減らすか?
エコロジカル・フットプリントとは、私たちの生活様式が地球に与える負の影響を計算するもので、それを減らすことが、現在、必要になっている。というのも、一般に資源は無限にあると思われているようだが、実際は逆で、まったくそうではないからだ。つねにより多くのものを生産し、つねに買うことをけしかけている消費社会は、環境に深刻な影響を与えている。つねにより多くを生産するということは、同時にそれだけ原材料やエネルギーを使い、そしてゴミを増やすことである。
これらのゴミをどうするのか? これが現在ますます緊急の問題になっている。「持続可能な開発」「エコロジー」「グリーン製品」といった言葉があるのは、私たちが生活スタイルを変えることを自覚している証拠でもある。買うときによく考える、ゴミはきちんと分別する、リサイクルをする――これらは環境汚染や無駄と闘うには効果的な方法である。