パレスチナを襲う新たな混乱
報復の連鎖でインティファーダ再来がささやかれるなか住民は危機感を募らせる
暴力の応酬 イスラエルの治安部隊に投石するパレスチナ人(ヨルダン川西岸地区ヘブロン) Mussa Qawasma-REUTERS
果たしてこれは第3次インティファーダ(パレスチナ人の抵抗運動)の始まりなのか。その答えがどうあれ、イスラエルとパレスチナの間で相次ぐ衝突はここ数カ月で激化し、住民を緊張状態に陥れている。
7月末に起こったユダヤ人入植者によるパレスチナ人への放火・殺害事件以降くすぶりだした暴力の応酬は、先月から急拡大した。きっかけは、ユダヤ暦の新年を前にイスラエル治安当局がエルサレム旧市街にあるモスク、アル・アクサーの周辺を封鎖したことだ。
同地域はイスラム教で3番目に重要な聖地であると同時に「神殿の丘」と呼ばれるユダヤ教聖地でもあり、参拝をめぐって衝突が絶えない場所。現在はユダヤ人による礼拝が禁じられているこの地でイスラエルが「現状を変更しようとしている」とパレスチナ人が懸念し、治安部隊との衝突に発展した。
それ以降、双方の暴力事件はパレスチナ全土に広がった。先週には、ガザ地区にあるイスラム過激派組織ハマスの武器庫を狙ったとされるイスラエルの空爆で、妊娠中の母親と3歳の娘が死亡した。
また、パレスチナ人の男3人がイスラエル人3人を殺害する事件も発生。翌日イスラエル警察が彼らの住む地区を封鎖すると、別のパレスチナ人の男がエルサレムのバス停で女性を刃物で刺して警察に射殺されるなど、連日のように襲撃が続く。
報復が報復を呼び、もはやどの暴力事件がどれをきっかけに引き起こされたのかも分からない状況だ。今月以降の衝突による死者は先週末時点でイスラエル人が7人、パレスチナ人は30人に達した。負傷者数はイスラエル側が20人前後、パレスチナ人は500人以上とされている。
イスラエルの治安当局による行き過ぎた武力行使も続く。攻撃される人の多くがデモ参加者で、13歳のパレスチナ人少年が射殺される事件も発生した。
治安部隊は以前より強硬
この状況に特に危機感を募らせているのは子供を持つ親たちだ。旧市街の入り口ダマスカス門の近くで香辛料店を営むユセフ・スレイマには、8歳から32歳まで7人の子がいる。先週彼は、パレスチナ人少年が警察官に銃撃されるのを目撃した。
「子供たちが仕事や学校に行く日には、彼らに100回も電話をかける」と彼は言う。「くれぐれも気を付けろと言い聞かせている。長く外出するな。遅くまで外を歩くな、と」