最新記事

EU

負担増警戒するドイツ、捨て切れぬ「欧州統合」の夢

ギリシャ債務問題を機に台頭したEU懐疑派をメルケルはどう御していくか

2015年8月3日(月)17時04分

8月2日、欧州統合を進めるべきか、否か──。ドイツが今、大きく揺れている。ベルリンで2012年8月撮影(2015年 ロイター/Tobias Schwarz)

[ブリュッセル 2日 ロイター] - 欧州統合を進めるべきか、否か──。ドイツが今、大きく揺れている。最近ではギリシャ支援などをめぐって欧州連合(EU)懐疑派が優勢になっているが、足元の懐疑論に目を向けすぎると、法規範にのっとった欧州統合を成功させたいというドイツの深い想いを見誤ることになる。

もし、EUというシステムが崩壊するとすれば、国粋主義の広がりを背景にフランスや英国、オランダが主権の共有推進を拒否したためであり、ドイツが財政規律や法規重視にこだわったからでは決してない。

ドイツのメルケル首相も「ユーロ圏が崩壊するときは、欧州も崩壊するときだ」と、ドイツ議会に対し繰り返し警告している。

EU統合はこれまで、仏独を中心としたチームプレーによって進められてきたが、2010年ごろに本格化したユーロ圏債務危機を受けてフランスが弱体化しため、ドイツが単独のリーダーに祭り上げられた。

ケインズ派のエコノミストたちは、ドイツは輸出が好調にもかかわらず倹約し過ぎていると批判。南欧では、厳しい緊縮策を押し付けたと、ドイツへの怒りが広がっている。米国や英国、フランスは、ドイツが軍事面の貢献拡大を拒んでいると不満を持ち、そしてフランスは、ドイツが欧州統合に向けた資金を出し惜しんでいるとして失望している。

こうして過大な負担を背負わされたドイツは、他国が自らの責任を果たさずに、ドイツの懐をあてにしていると、疑心暗鬼に陥っている。

ドイツで、各国からの批判に対する独善的な反論や、内省のほか、新たな解決策を探る動きが出ているのも、当然かもしれない。

「ユーロ圏議会」構想も

ドイツはEUについて、コール元首相いわく「運命共同体」と認識しているが、「負債共同体」になることは大半の国民が望んでいない。

独政府の独立経済アドバイザーから成る評議会は先週、「最後の手段として」ユーロ圏からの秩序だった離脱を促すメカニズムを提案。

また、加盟国間の負債の移転禁止を提唱したほか、ユーロ圏共通予算や、共通の失業保険制度の導入についても、否定的な見解を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、貿易協定第1弾を8日発表と表明 米英が

ワールド

デンマーク、米大使代行呼び報道内容確認へ グリーン

ビジネス

日本郵船、今期47.7%の減益予想 市場予想は上回

ビジネス

日本郵船、発行済み株式の11.1%・1500億円を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中