ナチス賠償金を要求するギリシャの破れかぶれ
金融支援交渉のさなかに戦時賠償を持ち出すギリシャにドイツは大激怒
消えない遺恨 ギリシャ側は過去の賠償は十分ではないと主張(写真は戦時中にナチスに虐殺されたギリシャの人々の遺骸) John Kolesidis / Reuters
これ程、都合の良いタイミングはないだろう。
ギリシャのユーロ圏離脱がますます現実味を帯びる中、金融支援交渉でドイツと対立するギリシャが、形勢逆転を狙って反撃に出た。第二次大戦中のナチス・ドイツのギリシャ占領に関して、数千億ドルの賠償金支払いをドイツに求めている。
ロイターの報道によると、ドイツのジグマル・ガブリエル副首相兼経済エネルギー相は、この要求を「馬鹿げている」と切り捨てた。要するにギリシャが債務危機を乗り越えるための資金をユーロ圏諸国から絞り出すための策略だ、と断じた。
国際通貨基金(IMF)に対する約4億8700万ドルの債務の返済期限が9日に迫った今週、ギリシャ財務省は初めて公式にドイツの賠償金が3020億ドルに上ると算出した。
これは大変な額だ。2010年にギリシャが欧州連合(EU)とIMFから財政破綻を回避するために受けた2600億ドルの救済策を上回っている。ギリシャが抱える3500億ドルの債務の返済の大きな助けになるだろう。
当然のことながらドイツは、戦時賠償はとっくの昔に解決した問題で、今になってそれを持ち出すのは、ギリシャの債務危機から注意を逸らそうとする「非常識」な試みだと主張している。
しかしギリシャは、ドイツが1960年に支払った賠償額は、請求額のうちのわずかにしか過ぎないという。ナチス占領下の残虐行為や破壊行為、それに当時のギリシャ銀行への強引な融資への返済額には、見合わないというのだ。
法的にギリシャがさらに賠償金を受け取る権利があるかどうかは不明だ。明らかなのはギリシャ政府が、次第に自暴自棄になりつつあり、現在の窮状をドイツのせいにしているということだ。
両国間の溝は、今年1月にギリシャの総選挙で急進左派連合が勝利したことでさらに拡大した。新政権のツィプラス首相は、多くのギリシャ国民が景気低迷と失業の原因と考えている「緊縮財政の悪循環」を終わらせると公約した。
ギリシャは今、堅物のドイツのウォルフガング・ショイブレ財務相ら、EU諸国の財政相と金融支援をめぐって交渉中だ。債務返済に必要な資金援助を得るため、どこまで経済改革を実行できるか協議を重ねている。