高齢者の視力を救う「望遠」コンタクト
問題は、AMD患者の大半が70〜80歳代の高齢者で、コンタクトレンズを目に入れるという細かい作業に不安があること。さらに、最大の問題点はレンズの酸素透過性の低さだと、トランブリーは言う。
このレンズの厚さは1・55ミリで、一般的なソフトレンズ(0・35ミリ)よりかなり厚い。そのため研究チームは、レンズに小さな空気穴を開けたり、酸素入りの液体をレンズ内にためるといった工夫を重ね、十分な酸素を角膜に届ける方法を模索している。
奇妙なことに、この研究には米国防総省防衛先端技術研究計画局(DARPA)が多額の資金援助をしている。
国防総省が眼病治療に関心を寄せるのは、EPFLが望遠機能付きコンタクトレンズとセットで使う特殊な眼鏡の開発も進めているからだ。
この眼鏡は着用者のウインクを認識してコンタクトレンズへの光の入り方を調節するという優れもの。右目をウインクすれば、遠くの物が大きく見える「望遠鏡モード」に、左目をウインクすれば「通常モード」に切り替わる。戦場の兵士にとっては、究極の「ハンズフリー・ズーム」といえる。
高齢者を失明の恐怖から救う最先端技術が恐怖の戦場で役立つなんて、何とも皮肉な話だが。
[2015年3月10日号掲載]