コバニ奪還で揺らぐ「イスラム国」の支配
青空から来た救世主
他の多くの都市同様、コバニの陥落は目前に迫っていた。クルド人部隊が、迫りくる敵の包囲網と攻防戦を繰り広げていたその時、晴れ渡った青空から救世主が現れた。
9月23日、ISISの侵攻を阻止するため、米軍が拠点の空爆を開始したのだ。
コバニは最大の目標だった。コバニとその周辺地域には、連日6回程度の空爆が行われた。
空爆の助けを得て、コバニの防衛隊は一進一退を繰り返しながら、徐々に街を取り戻していった。
米中央軍は今週、反撃部隊がコバニの街の90%を掌握している、と慎重にコメントした。
シリアのクルド系最大の政治団体、民主統一党(PYD)の外交委員アラン・セモによれば、コバニの防衛隊にとっては空爆が「生死を分ける」ものだった。「先週の集中的な空爆が大きな効果をあげた」と、セモは話している。
防衛隊のもう1つの勝因は、有志連合と地上部隊との密接な連携だ。これはおそらく他のケースでも教訓になるだろう。
しかし空爆がどれだけ重要な役割を果たしたとしても、地上部隊に今回の勝者が誰かをたずねれば、誰もが「クルド人」と答えるだろう。
コバニをはじめISISの攻撃に晒されたクルド系の地域の人々は、近年では例を見ない「団結」を見せた。
コバニ、シンジャールといったシリアのクルド地域の防衛戦には、国籍や政治信条を越えてクルド人兵士が結集した。
シリアの防衛戦に参加したトルコのクルド系政党、クルディスタン労働者党の軍司令官セミル・バイクは、ISISの攻撃がクルド系の団結を促したと話している。「巨大な脅威ではあったが、同時に図らずも我々を団結させた。様々な違いを残り越えて、すべてのクルド系が結集した」