韓国リベラルは北朝鮮の手先か
歴史が生んだ複雑な現状
こうした態度自体に問題はない。だがそこから派生した脱北者の扱い、特に金大中(キム・デジュン)と盧(ノ・)武鉉(ムヒョン)政権時代(98〜08年)のやり方が、左派の態度を道義的にどこか怪しいものにしている。
スタントンが我慢できないのはそこだ。「金と盧の政権時代、左派は人権活動家や脱北者、メディア、脚本家を検閲した。南における北の思想警察の役割を果たした」と、彼は前出の記事で言う。確かに、97年に韓国へ亡命した黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記は「大物脱北者」にもかかわらず、亡命後は目立った動きがなかった。当時の韓国は金の政権下にあったからだ。
スタントンの批判にはそれなりの理由があるものの、彼の見方は韓国の左派と政治文化の両者を過度に単純化している。韓国の左派すべてに「偏狭」のレッテルを貼り、彼らの政治態度は「独裁主義的」と断じるのはフェアではない。
スタントンは対北政策というレンズを通して韓国の国内政策を見る。これでは、ものの見方にゆがみが生じかねない。北朝鮮への制裁を強く支持するスタントンは、制裁が金正恩(キム・ジョンウン)体制の崩壊を実現すると信じている。
脱北者に対する左派の冷淡な態度に憤ることが間違っているのではない。韓国の政治文化は、スタントンが考えるほど単純ではないと言いたいだけだ。
現代の韓国の左派は、長い社会的・政治的歴史の産物だ。左派は独裁政権時代の弾圧にも、南北和解や将来的な統一にとって害がある(と彼らが見なす)政策にも抵抗を続けてきた。
過去から問題含みの遺産も受け継いでいる。自国の体制変化のために戦った陣営と、北の故・金日成(キム・イルソン)主席の主体思想を支持した陣営に分裂した事実だ。左派政治家の中に、いまだに北朝鮮を支持する者たちがいるらしいことも混乱に拍車を掛けている。
求められているのは変化
とはいえ、すべての左派が過去を引きずっているわけではない。例えば、新政治民主連合の安哲秀(アン・チョルス)議員は、左派の「革新的」側面を代表する人物だ。
同じく新政治民主連合に所属する朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は、保守的な韓国の政治文化においてLGBT(レズビアンやゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の権利を支持すると表明している。彼らは今のところ党の「顔」とは言えないが、これからの左派を象徴している。