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安全保障

「アジアはアジアで守る」中国・脱アメリカ宣言の思惑

2014年12月19日(金)12時16分
ミンシン・ペイ(米クレアモント・マッケンナ大学教授)

 東シナ海で一方的に防空識別圏を設けるなど、中国の挑発的な軍事行動の結果、日本との関係はかつてないほど冷え込んでいる。不安に駆られた東南アジア諸国は、アメリカが安全保障の枠組みに残り、中国ににらみを利かせてほしいと懇願する。

「アジア人のためのアジア」の根底には、周辺国が中国に反抗するのはアメリカのせいだという思いがあるのかもしれない。そうだとしたら、アメリカのプレゼンスは中国の国益を直接、脅かすもので、排除するべきだという結論になりかねない。

 これはアジアの安全保障の力学を根本的に誤解しており、戦略的にとてつもない間違いだ。近隣諸国の大半は、中国の野放しの覇権を恐れている。アメリカのプレゼンスがなくなれば、まさにそのような事態になるだろう。「アジア人のため」ならぬ「中国人のためのアジア」だ。

 とはいえ、アジア諸国に支持されないだけでなく、アメリカと確実に対立することになる政策を、中国が推し進めるとは考えにくい。習も最近はトーンダウンしており、共産党指導部に「中国はソフトパワーを増強するべきだ」と語っている。

 歴史的に見て望ましくない理由もある。30年代に日本が提唱した「大東亜共栄圏」は、欧米の植民地支配に代わる新しい秩序を盾に侵略政策を隠そうとしたが、あまりに見え透いていた。

 中国にとって賢明な行動は、新しいスローガンを潔く下ろすことだ。

© project Syndicate

[2014年12月16日号掲載]

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