ダライ・ラマ訪問という外交リスク
寛容と福祉の国で知られるノルウェーさえ、ダライ・ラマを避けている。ダライ・ラマは今年5月にノルウェーを訪問したが、政府高官たちは彼との面会を拒んだ。理由は、10年に獄中の民主活動家、劉暁波(リウ・シアオポー)にノーベル平和賞が授与された際、中国から受けた「報復」を覚えていたからだ。
受賞者はノーベル賞委員会によって選ばれるのであって、ノルウェー政府は関与していないにもかかわらず、中国はノルウェーからの輸入を制限。文化交流や外交にも影響を及ぼした。
この苦い経験から、ノルウェー政府は同じ轍は踏まないと決意したようだ。エルナ・ソルベルグ首相は、中国との関係を重視してダライ・ラマと面会しなかったと公言。「中国政府が会うなと言ったわけではない。ただ私たちは、もし彼と会えばもっと長く『冷凍庫』に入れられたままになることを知っている」と語った。
こうした経済的圧力を使ってもダライ・ラマの影響力を封じ込められない場合、中国は現14世が亡くなった後の後継者選びに口を出してくるはずだ。中国政府は既に、15世を選定する権限を主張している。
しかしダライ・ラマは先日、ドイツ紙ウェルト・アム・ゾンタークに対し、自分の代を最後にチベット仏教の転生制度を廃止すべきだと語った。以前にも、「政治目的」のために後継者を選ぶ権利は誰にもない、と述べている。中国に翻弄される運命に終止符を打ちたいのだろう。
From GlobalPost.com特約
[2014年9月30日号掲載]