最新記事

東欧

ウクライナに出兵するロシアの創造的言い訳

あくまで越境攻撃を否定し続けるロシア不条理な「ポストモダン型戦争」の出口はどこに

2014年9月4日(木)18時02分
ジョシュア・キーティング

休暇中だった? ウクライナ領内で拘束されたロシア兵(上写真) Valentyn Ogirenko-Reuters

 ロシア政府とウクライナ東部の親ロシア派武装勢力は、一貫してロシア軍の関与を否定してきた。戦車や対空ミサイルはウクライナ政府軍から奪ったもので、武装勢力に加わっているロシア人はロシア政府のコントロールが利かない民間人だ、と。

 だが、ここにきてロシアはウクライナ東部への軍事介入をエスカレートさせており、同時に彼らの「創造的説明」にもますます磨きが掛かってきた。

 ロシア国営テレビによると、現在ウクライナには数千人のロシア兵がいるが、彼らは侵略軍ではなく、休暇中の兵士らしい。ウクライナ南東部では最大4000人のロシア人が戦闘に加わっていると、「ドネツク人民共和国首相」を名乗る親ロシア派のアレクサンドル・ザハルチェンコ司令官は同テレビに語った。「彼らは休暇をビーチではなく、自由のために戦う兄弟たちと過ごすことを選んだのだ」

 NATOが公開した衛星画像やYouTubeの投稿動画には、ロシア軍の車列らしきものがはっきり映っている。それでも軍事介入の事実を否定し続けるロシア政府が次にどんな「創造的説明」を持ち出してくるか、見当も付かない。

 一方、ウクライナはNATO加盟の方針をあらためて打ち出した。NATO条約第5条には、加盟国への武力攻撃には全加盟国が共同で反撃すると定めた集団防衛条項がある。だが、正式に加盟が承認されるのは少なくとも数年先とみられている。

 7月中旬に、マレーシア航空機が撃墜された直後には、ウクライナ政府軍が親ロシア派の支配地域を次々と奪回し、武装勢力の鎮圧は時間の問題に見えた。現在もウクライナ軍は親ロシア派の拠点ドネツクとルガンスクに迫っているが、南東部の国境地帯ではロシア軍が新たな戦闘を仕掛けているもようだ。その間もプーチン大統領はロシア軍の直接的関与を否定し続け、ウクライナのポロシェンコ大統領と話し合いを行っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中